6話

「絶対無理。天敵だもの」

部屋にブラッドを招待してみたら、エネミーが俺の背後に隠れたまま出てこなくなった。どうやらブラッドは悪魔の天敵である悪吸族という種族らしい。文字通り、悪魔や魔族などの血を吸って生きている種族でーーその黒檀のような黒髪と、宝石の様に紅い瞳を持つことから、好事家達の奴隷になったり魔物討伐に駆り出されて数が段々と減っていきーー今は、ブラッドしか生き残っていないそうだ。

「僕は紳士ですから、怖くないですよー」

にこにこと穏やかに笑いながら手招きするブラッドは、変態の鑑だった。

「ひっ……生理的に恐怖」

「えー、僕は好きですけどねぇ……助けて頂きましたし?」

「助けた覚え無いわよ! お父様でさえ悪吸鬼を私にけしかけなかったもの!」

怖がりつつもちゃんと会話をしているエネミーは、もしかしたらMかもしれない。ブルブルと怯えながら話しているエネミーに、ブラッドという名の変態はテンション上がりっぱなしだぞ。

「ブラッド、もうエネミーを怯えさせるな。エネミーは俺が守るから変態に構わなくて良いぞー」

「え、酷くないですか」

「いや、普通の対応だろ」

「そーよそーよ!」

強気な態度が戻ってきたエネミーだが、俺のい……弟を思い出して優しい気持ちになる。

「とりあえず、仲間増えたよ記念に飯でもいくか」

「お、良い案ですね」

「お腹空いたし行ってあげるわ」

俺の背中から離れる気の無いエネミーをそのままおんぶし、宿屋から出る。

「……いつもその格好で出歩いてるんですか」

「エネミーは基本おんぶで運んでる。楽だし」

ブラッドに相当引かれた目で見られた。お前もロリコンじゃん……みたいな。

「俺をロリコンと一緒にすんな。俺はこっちの方が楽だからやってんだ」

「あーハイハイ」

くっそ覚えてろ……いつかボコボコにしてやる。


「お店は此処で良いですか?」

ブラッドがいつの間にかお店を紹介する流れになってた。連れてこられたのは女子受けしそうな店だ、が……《特盛りタダ!》と書いてある限り普通の店じゃないんだろうな。

「可愛い……」

ポツリとエネミーが呟く。気に入ったらしいし此処でいいや。

「いらっしゃいませー」

店内に可愛らしい声が響く。やっぱ女の子の声は癒しだ。ウェイトレスさんの服装も申し分ないレベルの可愛さだし。最高。

「エネミーさん、何頼みますか?」

「時間制限付き特盛り飯を全種類」

メニューにはデカデカと特盛り飯が如何に辛いか書いてある。手を付けてから10分以内に食べ切ったらタダらしい。

「俺は特盛りステーキのごはんセットで」

「シザリスには聞いてません……私は、パン一個で良いです」

「あいよーすいませーん」

早速ウェイトレスさんを呼ぶ。俺的イケメン角度でウェイトレスさんを誘惑しつつも、注文を言っていく。

「特盛りカレー、特盛りラーメン、特盛りカツ、特盛りチャーハン、特盛りヒレカツ一つづつと特盛りステーキ定食……え? 人数分しか頼めない? じゃあ、特盛りステーキ定食二つと、パン一つと、特盛り魚定食一つで」

「かしこまりました」

少し微妙な部分があったものの、注文が終わった。はぁー……美人だったなぁ。

「……気持ち悪」

ボソッと呟かれた言葉に、少しだけ心が折れそうになる。まあ、俺はダイアモンドレベルでメンタル強いから良いけどな。ああ……い、弟に会いたい……。

「注文する時、顔面崩壊してましたよ」

ブラッドは半笑いで煽ってくるからタチ悪い……店内じゃなきゃ殴ってた。


それから飯を食べ終わり、街を適当に散策して、エネミーを宿に置き、再びクエストへ向かった。

「あれ、またお前と一緒か」

次の魔物討伐クエストにも、ブラッドとペアになっていた。偶然にしては出来過ぎてないか?

「最初から仕組んでたので当たり前ですね」

あっさり吐きやがった。

「エネミー目的、って奴か?」

「まぁ……そうですね。仲間になった事だし、隠し事はしませんよ。女装趣味のシザリスさん」

「殺す」

クエストが終わった後の闘技場でめちゃくちゃブラッドをメタ斬りにした。復活って便利。

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