11話

部族の人達と深夜まで呑んだくれていたせいか、目覚めたのは多分昼過ぎーーなのだろう。わずかな木漏れ日からは太陽の陽が見えるので、きっとそうだ。

「シーザーリースー」

エネミーのわざとらしく可愛らしい猫撫で声を聞いて、本能的にこのまま眠っていたくなるくらい嫌な予感がする。ていうか異臭が凄い。なんだろう、この既視感のある……うわもしかして。

「起きてるのは分かってんのよ、シザリス。このまま起きないならブラッドと同じ目に遭ってもらうから」

薄目でブラッドを確認すると、スプーンを口に突っ込まれたまま泡を吹いて倒れている惨めな姿が……!! これ起きた方が得策かも。

「……っるせーなぁ……一体何やらかし、て」

「あ、兄さん! エネミーちゃんと一緒に料理作ってみたんだよ!」

「うわぁい」

渋々起きた俺に、少し照れ臭そうな顔をしたソワードによって最終死刑宣告が下された。絶対これエネミーの仕業だろ! あいつが楽しそうに笑ってる時はロクなことにならねえ! なんでよりにもよって料理破壊に定評のあるメシマズのソワードに頼みやがったんだ! クソが! ゲテモノ食いと呼ばれる俺が唯一食べられないのが妹の料理なんだぞ……!!

「そ、ソワード……ありがとう。気持ちは嬉しいんだがかなり二日酔いが酷くてだな?」

「まぁ、そんな事言わずに食べなさいよ」

無慈悲な悪魔によって、無理矢理口にゲテモノという名の嘔吐物を突っ込まれた!



「ーーあれ? 普通に食える?」

なるほど。ソワードは別として、エネミーが不味くなるよう手を加えた結果、普通の食えるゲテモノ料理になったって事か。これなら楽勝だわ。

「は?」

エネミーの不満気な声を無視しつつ、俺は初めて可愛い妹の手料理を完食した。ありがとうエネミー。初めてお前の事も可愛いって思ったわ。

「ご馳走様ソワード。美味しかったよ」

「女装趣味の変態兄さんありがとう……!」

ソワードの頭を撫でてやりながらお礼を言うと、可愛らしい笑顔の妹が照れ隠ししてきやがった可愛いなコイツ。

「よーしソワード表出ろー? 俺は女装趣味の変態じゃないって事を身体に教え込んでやるからなー?」

「ハハッ! 兄さんそんな女の子みたいな格好で戦えるんだ? 僕が勝ったら兄さんは女装を速やかに辞めてね」

二人仲良く武器を持って外に出た。この村は私闘が禁じられていない上に好戦的な奴が多いため、おあつらえ向きに安易的な闘技場があるのだ。

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