10話
道中でアッサリ性別が分かってしまったところでーー
リーバルダーー精霊伝説を信仰し、森と生きる村。狩人を生業とする者が大半を占めている。
「ふう。着いた……」
ここ、秘境なのよね。道は単純な筈なのに、すぐ迷う。そういえば、一回も迷わず辿り着けた事ないな。
「すやぁ……」
森に入って数秒で俺におんぶされたエネミーはすっかり寝てしまっているし、俊敏な動きが得意な代わりに体力のないソワードはすっかり息を切らせ苦しそうにしている。
「こ、ここ……初めてきた……」
地べたにドテッと座り、水分補給をしつつ呟くソワード。
「俺は結構来てるから慣れたな……あれ、ブラッドは?」
そういえばあの白い変態が居なかった。いつの間に消えたし。
「こ、ここです……」
死にかけのハエの様な男が、そこには居た。ただでさえ白い顔が青白くなっている気がする。
「まだ生きてたんだ。しぶといね」
「まあ、人間じゃないですし」
「……どこまで耐久力あるか試していい?」
ソワードとブラッドの仲が思ったよりも悪い。まあ同族嫌悪という言葉もありますし。こっちに被害が無ければ良いか。
「……ふあー……まだ着かないの」
丁度エネミーも起きたらしい。そろそろ村に入るとするか。
「武器構えておけよー……手厚い歓迎が待ってるからな……エネミーはちゃんと掴まってないと振り落とすぞッと!」
「「「えっ」」」
三人分の声が綺麗に揃ったのを確認し、一足先に地面を蹴った。すると、丁度俺が居た部分に槍が深々と刺さっている。ソワードもブラッドもここで死ぬような奴じゃないって信じてるぞ!
「……なんて、言ってる場合でもないか」
木々の間から矢のようなものが星の様に光ってるのを確認して、自嘲気味に呟く。リーバルダー村は外界を嫌う部族であり、基本的にこの歓迎を突破出来ない者は精霊に選ばれていない者と認識され、最悪殺される。っていうか背中にエネミーが居ない! と、思ったら流石に背中から退いて、後衛で魔法を使ってくれているようだ。ありがてぇ。
「……全員無事、だよね?」
降ってくる槍やら矢などを華麗に回避し、気付かない内にエネミーが張ってくれていたバリアーのお陰で傷も少なくて済んだ。ありがとうエネミー、そんな気持ちを込めて頭を撫でる。
「怪我治す方が大変だからちょっと助けただけ。別にあんた達の為じゃないし」
口数が比較的多くなった時は喜んでいる証だ。最近やっとエネミーの扱い方をマスターした気がする。
「リーバルダーの住民達よ! 俺達は試練を突破したぞ! 村に通してもらおう!」
高らかに宣言すると、いつのまにか木々が道を作り、村の門が見えた。今のはきっと木の精霊様の力って奴だな。
「ッし! 今回も無事突破出来たな~! よし、お前ら行くぞ~! リーバルダー村の木の皮を贅沢に使用した木ノ実の煮物は絶品だぞ!」
むしろこの為だけに来た、というのは秘密にしておこう。
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