リリエレ
アリスと旅を始めて二日。最初こそ村に帰ろうと騒いでいたアリスだったが、仕方なく頬を叩いて、目を覚まさせた! それからアリスは、オレに優しく微笑んで、食べられる草を使って料理をしてくれたり、基本野宿だが少しでも衛生的に良く寝れる場所を探してくれたり、モンスターから隠れさせてくれたり、とヒロインらしく、甲斐甲斐しくオレに尽くしてくれている。
「見えた……やっとリリエレに着いたわね」
リリエレとは、故郷の村から森を隔てた場所にある遠い町だ。アリスがなんでここを目指したのかわからないが、そうか!勇者アルバートをみんなに広める為だな!此処は宿場町として有名で、美人が多く産まれる事で有名だ。だからなのか、娼館も影で有名……らしい。オレはアリス一筋だからな! 浮気なんてしないし、その内心だけじゃなくてーー
「アル、返事が無いからお宿取ったよ。お夕飯は十八時ですって。それまで私は宿で休むけど……アルはどうする?」
「うぇっ?! あ、あぁ……オレも、部屋で休むかな……」
ごくり。いつも見ない部分を無意識的にに見てしまう。いや、アリスが可愛いのが悪いんだ。
「お! お部屋でごゆっくりぃ~!」
アリスと宿屋に行き、受付カウンターにいる桃色髪の元気な少女の意味深な言葉にドキドキしつつもなんとか冷静を保った。もしかしなくても、同室……?!ダブルベッド……って事か? ドキドキが止まらない。前を行くアリスはいつも通りだけど……もしかして慣れてたりとか……
「はい、コレがアルくんの部屋の鍵ね。ゆっくり休みたいから、また後で」
どうやら、オレの恋人はつれない様です。
ーーーー
私の厄介な幼馴染は、今日も自分勝手な妄想に浸っている。魔王討伐の王命とやらを受けた勇者にしては何にもしないで全部私を頼るし、時折私を下品な眼で見てくるのが心底気持ち悪い。私にはもう心に決めた人が居るんだから、勝手にヒロインだとか勝手すぎる事を言わないで欲しい。久々のシャワーで身体を綺麗に清め、その後、某所に連絡を入れたーー途中、奴が部屋をノックしてきたけど寝てる体を装った。防犯だけはしっかりしてる宿を選んだのよね。ああ、あと可愛い女の子がいたからーー可愛いって正義ね。
十六時。宿の下にある食堂でそれは起こった。
「きゃっ! や、めて下さい……!」
か細い女の子の悲鳴じみた声。そこに眼を向けると、屈強な男二人に囲まれた従業員と思われる花の様に可憐な少女がそこにはいた。目の前の幼馴染は食事に夢中みたいで気付いてないみたい。
「アル、女の子が暴漢に襲われて」
「なんだと?! あっあそこか! おいお前ら!女の子に寄ってたかって恥ずかしくないのか? この勇者アルバート自らが切り捨ててやる!」
お遊戯会かな? と思いつつ、少しだけアルを見直した。あんなに屈強な男二人に勝てると思ってるその無謀さは正直好感が持てる。男二人はガキ一人で余裕だと高を括ったのか拳を鳴らしながら近づくーーかと思いきや、その場で倒れたのである! どうやら少女が何か棒状の物を首に思いっきり叩きつけたみたいだ。あの素早い動き、私__エルフでなきゃ見逃しちゃうわね!
「あのぉ……勇者様、たっ助けて頂きありっありがとうごじゃいました……っ! あのっ良ければ私も……! リルチェも、パーティーに入れてくだひゃい……!!」
精一杯の勇気を振り絞ったのだろう。少女の顔は熟しきった林檎の様に赤く、言葉もかみかみで愛らしい。
「はぁ? 俺は別に「よろしくねぇ~リルチェちゃん!」……よろしくな。リルチェ」
耐え切れずにリルチェちゃんを抱きしめる。百合的趣向は無いが、美しいものや可愛らしいものを愛でるのは、義務である。
▽リルチェ が なかまに なった!
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