15話


「おい偽勇者! 聞いてんのか?」

「ねぇ貴方シザリス君よね? 私アリス、あの時旅したエルフのアリスよ!」

ヤベー奴等に粘着されてしまった。勇者クンは突っかかってくるしソワードはリルチェとかいう桃色髪のおっぱいでっかい子を口説き落とそうとしてるしブラッドは茶髪のイカツイ仮面付けた男と延々と口論をしている。そして出会わせた元凶であるモードとかいうダークエルフの兄ちゃんは仲間達と共にエネミーを連れてってしまった。神様っていないんですね。

「別に他人の振りしたいだけで無視では無いし俺の名前はバートンですシザリスなんて知りませんね……人違いでは?」

「シザリース! 加勢してください!」

「……ブラッド、殺す」

おいなんて事言ってくれるんだタイミング良すぎるだろうがちゃんと人の気持ち考えろよな! まあ戦うか!


「……改めて俺の名前はシザリス・リッパー、一応勇者やってます。今は故郷を目指してますよろしく」

「私の名前はシトラ! 姉ちゃん元気ないなぁ〜!」

あの後暴れたせいで店を追い出された俺たちは宿に帰る子供達と引率役を見送り、二軒目に来ていた。シトラという恋人持ちの美女が悪気なく背中をバンバンしてくるのが逆に癒しである。

「私の名前はアリス。アリス・スイミーよ。好きなタイプは自分の黒歴史バレるのが恥ずかしすぎて下手な偽名名乗っちゃう女装してる人……かな?」

完全ロックオンじゃないですかやだー! 最後こっちわざわざ見てにこって微笑むのとかズルすぎると思うんだ。賑やかになりそうな予感である。積もる話が恥ずかしすぎたので割愛。


「おはようございます、シザリスさん……えと、ご飯できたのでぇ……あのっ……ふえぇ」

朝起きたら桃髪少女ことリルチェが怯えながら起こしにきてくれた。朝食は絶品で、クオリティーというか込めている想いが強い、そんな素晴らしい朝ごはんだった。アルバートとかいう自称勇者、イケメンな上に毎日こんな美味しいもん作って貰っていながら文句言うとかクソだろ。エネミーとソワードは延々とおかわりしてるしな。うんうん、うちのパーティー、手料理に慣れて無いからな。分かるぜその気持ち。

「そういえばシザリス、故郷ってどんなところなのかしら」

俺の膝を占拠していたエネミーがふと食べる手を止め聞いてきた。食うの大好きなエネミーにしては珍しい。

「んーー、緑豊かで決め事とかが色々とうるさい場所だな。あと俺の兄弟がいっぱいいてうるせえなぁ」

「ふぅん。じゃあ、私とブラッドは一抜けさせて頂くわ。大人数って苦手なのよね」

「と、いう訳で、エネミーさんは頂いていきますね〜」

ひょい、と軽い口振りで俺の膝に座っていたエネミーはブラッドに抱き抱えられた。そのまま流れる様に宿から出て行ってしまった。

「え、マジかよ……」

溢れたのは、そんな言葉。

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