幸福人形


――嗚呼、私達は負けたんだ。ぼう、とする意識の中で何とか思考を働かせる。

「帰ってきてくれたんだ……俺の、     」

誰かの名前を悦に入った表情で呼ぶ声が聴こえる。私はこれから誰かの代わりとして生きるのか。それは幸せなことなのだろうか、それとも。

「お……ミー! エネ……! 起きろ!」

懐かしい、大好きな声が聴こえる。なぁんだ、夢だったんだ。

「起きてるわよ、シザリス」

離さないように伸ばした手は、面白いほど早く摘まれてしまった。握られた手が燃える様に、痛い。


「……おはよう、僕のお嫁さん。シザリス……否、僕の部下に助けられたみたいだねぇ。大丈夫。これからは俺が君の支えになってあげるから!」

幸せなんて、望まなければ良かった。

「私、これからどうなるのかしら?」

「君の全てを一旦リセットさせてもらうよ。僕だけの、大切なエテルニテになってもらいたいんだ」

「なによそれ、ただの人形じゃない。お人形遊びが楽しいなんて、バカなガキね」

「はははは、やっぱり声も顔もエテルニテだ! 君は笑っている方が美しい! さぁ、僕だけの花、僕だけに咲いてくれ!」

……いっそ全てをリセットされた方が、幸福なのかもしれない。

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