プロローグ

俺の朝は一杯のコーヒーから始まるーーなんてことは無い。そもそもコーヒーを作るのが面倒だから、朝は朝飯に全力を尽くしている。現在は俺の好物であるミートいちごパイを作っている。自慢になってしまうが、俺は家事が出来るし地位も上の方だし、紳士的だし顔も整ってるし強いし……最高だと思う。欠点は女装している事ぐらいだが、問題は無い筈……自分が女だったら普通に付き合いたい。そうそう、名乗り忘れていたが俺の名前はーー

「シーザリースちゃーん」

変態ロリコン王に呼ばれた気がするが、シザリスだ。この物語の主人公である。

「シザリスちゃん、パイ焼けたよ」

勝手に俺の椅子に座り、寛いでいる変な男はアリックス。この世界で一番大きい国の王である。顔良し家柄良しとスペックは良いのだが、性格が捻じ曲がっているし、性癖もおかしい。一途なようだが、コイツにだけは好かれたくない。不本意であるが俺の友人であり、守護すべき相手でもある。

「あーハイハイ……で、何の用ですか?」

出来上がったばかりのミートいちごパイをそのまま口に突っ込む。今日も良い出来だ……流石俺。

「ちょっと魔王殺してきてくれない?」

「はぁ?!」

あまりに突拍子も無い言葉に、ミートいちごパイを落としそうになってしまった。てかノリが相変わらず軽過ぎて怖いな?!

「旅費は充分過ぎるほど出すし、装備も充実させたから……シザリスちゃんの強さなら1人でいけるだろうから、仲間は良いよね!」

ちょっとコイツが何言ってるか理解出来ん。

「待て。待って下さい。俺より強い奴は居るでしょ」

「シザリスちゃんにしか任せられないんだ……この子も保護して欲しいしね」

スッと王様が一枚の写真を出してきた。写真にはムスッとした表情をしていて全体的に紫色の装い……とリボンを付けた王様の好みそうな幼女が映っており、雰囲気的には見合い写真ーーん? 見合い写真?

「流石に犯罪ですよ」

「いや、あっちから申し込んできたから。合法だから。平気」

鼻息の荒い王様の言葉に、意識が遠くなりそうだ。ダメだ。話が通じねぇ。そういう問題じゃねぇだろ。

「この子まだ13才か14才位じゃないですか……せめて3年か7年待つべきです」

「この子魔王の娘だから、待ってる間に俺が死ぬ」

「……もう、あの、いっそそっちの方が良いです」

「ひっどーい……で、本題だけど、」

急に真面目モードに切り替える王様に、思わず背筋をピンとさせる。

「この子父親ーーつまり魔王に愛されて無いらしくて、厄介払いの為に利用されてるんだよ。苛つくじゃん? だから殺してこい」

最早命令口調である。そうして俺の身体はテレポートされてる途中のように透明に……ん?

「じゃーねーシザリスちゃん! 後で色々送るよー! 目的達成までシザリスちゃんが入ってこれない結界作っといたから、安心して旅に出てね!」

「ふざけ、」

ーー意識が、暗転した。

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