3話

「おーい、起きろー」

朝起きると、別々のベッドで寝ていた筈のエネミーが俺を抱き枕にしていた。警戒心なさ過ぎだろ……と心の中で呆れつつも引き剥がそうと試みる。別に急ぐ旅でも無いから良いんだけどな。昨日あの後王様から貰ったモノを点検していたら割と抜けがあるのを発見したので色々買っておきたい。金もいっぱいあるしね。

「ん……スヤァ」

中々起きない……もういっそこのまま連れてくか。そうしよう。

「よいしょっと……」

エネミーをおんぶして、そのまま宿をチェックアウトして街へ出る。買いたい物は色々あるが、まずは野宿セットでも買うか……あと、エネミー用のお菓子(昨日あの後エネミーが甘いもの好きと知った)を大量に購入。バッグに容量あって良かった。

「あとはー……研磨剤とスキンケアー」

俺のお手入れ道具と武器のお手入れ道具も一定量入れとかないと不安だ。不本意な女装といえども完璧にやらなきゃね。武器は常に斬れ味を最良状態に保っておきたいし。そう、俺の女装は王命である。決して趣味ではない。女装しないと生まれ故郷が消されるのだ。

「ん……ここどこ?」

やっとお姫様が起きたようだ。寝ぼけ眼を擦りながら、俺の背の上でエネミーが目覚めて伸びをする声が聞こえる。

「ライアヴィスの街中を回りつつ旅の必需品揃えてる」

そっとマシュマロを餌付けしながら状況説明をする。エネミーは瞳を輝かせつつマシュマロを口の中で転がし始めた。ハムスターみたいで少し癒される。

「…………もっと」

「ハイハイ」

マシュマロを袋ごとエネミーの口に突っ込んだ。

「ふぐっ」

予想していなかったであろう俺の暴挙にエネミーは涙目になって俺を睨み付けてくるが無視だ無視。



買い物が終わり、昼飯も食べ、ライアヴィスとおさらばしたーーにもかかわらず、エネミーは未だ俺におんぶされている。

「おい、そろそろ歩け」

「面倒」

……ですよね。なんというか、娘ってこんな感じなのかなと思うと、心が暖かくなった。

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