17話

俺とソワードの故郷に辿り着いた。道中色々あったがここでは割愛させていただこう。想像するのも中々楽しいものだろうからな。

「あーっ!! わが愛しの妹と弟! 予想通りの到着お疲れご苦労」

前方から聞き覚えのあるゆったり変人ボイスと細いシルエット、そして何よりこの村にとって神の象徴でもある赤い髪が見える。

「ご名答ー! みんな大好きマル兄さんだよーん」

ジャジャジャジャーン、という音が聞こえて来そうな程テンション高く、リッパー家長男でありこの小さな村で神と崇められているマル兄さんが現れた。チャームポイントは両目とも赤い瞳を隠す為に付けられた白い布で、真ん中に大きくマルしてあるのはご愛敬……というか、幼い俺の描いた悪戯描きである。髪は肩までも無い外向きの短髪で、神の象徴とも言われている真っ赤な色をしている。体は病人かと思う程に細く、白い。

「シザリスくんどうしたのかにゃーん? 久々の兄さんに会って感動しちゃったー?」

「久しぶりマル兄さん……えーと、相変わらずでなにより」

マル兄さんは俺とソワード……というか兄弟たちにとっての天敵であり、良い思い出がひとつもないと言い切れるほどに性格が歪んでいる。というか、こののんびり具合を見るに、緊急事態とかもう俺たちに会いたかったマル兄さんの嘘にしか思えない。

「……ねえ、緊急事態とやらはどうしたの、マル兄さん」

我が妹は本当に真面目だなァ。こんな様子で緊急事態なんてある訳

「え、緊急事態ィ……? ああ! マジマジ! 家半焼だよウケる~! 流石にこれは読めなかったねぇ!」

「えええええええ?! 嘘でしょ母さんたち大丈夫なの」

驚きすぎて声も出ない。マル兄さんが真面目に俺等を呼び出すとか緊急事態が過ぎるだろ。どうりでいつもマル兄さんを囲ってるお偉いさん方も居ないわけだ。

「な~んかさ~、隣の村が火事になったらしくて、その火がこっちまで来ちゃったんだよねぇ~あぁ、犯人ならもうすぐ……うんうん、あともうすぐで捕まる、かも」

千里眼と予知能力を持ち他人の不幸を蜜の味とするマル兄さんが言うのなら多分確実である。それにしても放火かぁ……放火の犯人って確か問答無用で死刑……だったよな? 誰か知らないけどご愁傷さまでーす。

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