その後の話③
眩しい光が溢れる。いつも通りむせ返る位に漂う薔薇の香りに鼻が曲がりそうになりながら、感覚を遮断する。
「おはよう、エテルニテ」「昨日は良く眠れたかい?」
聴き慣れてしまった声が気持ち悪い。無理矢理笑顔を作って、こくりと頷く。いつかここから逃げ出す為に。今日も彼らが喜ぶ私を演じる。
「えぇ、よく眠れたわ」
紫と黒を基調とした薔薇に囲まれた空間。ベッドはふわふわ、ふかふかだけれど、魔力を制限する為のリボンが腕に巻かれているのが頂けない。拘束するなんて馬鹿みたい。なんでお父様と言いこの二人と言い、私を拘束するのが好きなのかしら。
「ねぇ、シンとアレン。ご飯が食べたいわ」
媚びない程度の甘い口調で強請る。別に食べなくても生きていけるのだけれど、こうすると彼等は喜んで拘束を解くのだ。
「今日は貴重な花の蜜だよ」
蜜で腹が膨れる訳ないでしょう。馬鹿なのかしら、馬鹿だったわ。
「……ありがとう」
私は、『エテルニテ』として生きている。花の蜜を吸って、この二人が満足するように生きるだけの代用品でしかない。なんて、気持ちの悪い話。自由なんて、どこにも有りはしなかった。
魔娘記 あるむ @madorum
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