13話

今日、というか腰痛が無くなるまでの間、僕はエネミーちゃんというお人形さんの様に愛らしく尊い存在と一緒に寝る権利を得れた。エネミーちゃん良い匂いだなぁ……ご褒美タイム過ぎてどうしよう。どうすれば良いんだ、僕。

「腰、大丈夫?」

エネミーちゃんの小さい手が、私の腰を撫でる。はーーーー、なんていうか段々腰が復活してるような錯覚すら覚えるその優しいぬくもりにときめきしか感じない。今、僕は世界一幸せな自覚がある。

「……とりあえず治癒魔法掛けておいたから、明日には治ってる筈よ」

流石エネミーちゃん抜かりない。


早朝、鳥の鳴き声で目が覚めた。隣で寝ているエネミーちゃんは我観せずといった様子で眠っており、何故かブラッドと兄さんは旅立つ準備を始めていた。

「また置いていくの、兄さん」

こうやって兄さんの真似をして冒険者をする前は、兄さんのサポートをして治癒魔法なんかを使えちゃったりする万能な妹になりたくて、適正も無いのに毎日魔道書とにらめっこしてたなぁと思い返す。あの時、冒険に出る時は一緒だって頭を撫でられた事を思い出した。結局、嘘だった訳だけど。

「いや、王様から火急の件。故郷に行けってさ……つーか、お前はたまたま行く方角が一緒だっただけだろ? 無理しなくて良いんだよ」

兄さんが嘘を吐いているのは分かるのに、声が出ない。確かに、元々僕は兄さんに会えたのが嬉しくて、けど素直になれないから仲間にしてって言えなかったんだっけか。

「なに馬鹿言ってんの。ソワードも仲間って奴なんでしょ? ほら、サッサと準備して行くわよ」

いつの間にか起きていたエネミーちゃんが気怠げに言う。停止していた僕に喝を入れてくれるかのようにぽん、と腰を叩かれた。

「まあ、ここまで着いてきちゃったしね。僕も故郷に一回顔出して行きたいし……勝手に着いてくよ」

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