第22話 オーボエの佐川さん
「僕、小西って言います」
「知らない」
佐川さんは目を伏せ、相棒のオーボエの個人練習の用意をしている。譜面台を立てて、小西の方には向きもしない。小西には完全なる嫌悪の姿勢だ。早く帰ってくれと言わんばかりの。
「前にDM送ってみたかと思うんですが」
「DMなんか大量に来るから分からない」
すると小西はズボンを脱ぎだした。雅と俺は非常に慌てた。
「小西君、ズボンを上げて」
「バカ、小西。ここで脱ぐな」
「見て下さい!」
小西は真っ赤なふんどしを履いていた。
「さぁ、この尻をこの痛いハリセンで打ち抜いてください。早く!」
変態さんだ。もうこいつとの付き合い止めよう。
「ば、ば、ばか。そんなことするわけないだろ」
押されるのは嫌だ。それはプレイの優位性を持ち、この先に何が起きるか想定出来るだろう。調教しているが、それが覆されるのをサド役ばかりやっている一介の女子高生ではあまり予期していないことなのだ。実際、佐川さんはそうだ。
佐川さんは大きく動揺した。いや、普通の状態でも目の前で男子がふんどしになったら、まずは驚くだろう。
「佐川さんが叩いてくれないと俺、止めません」
「大声で言うな、馬鹿もん」
もう佐川さん弱って、普通の高校生みたいな焦り方だ。さっきまでプレイしていたなんて信じられない。佐川さんの半泣きっぷりが痛々しい。止めようと前に乗り出すと、小西は「これ以上近づくとふんどし脱ぐぞ」と脅迫してきた。
「もういや、助けてよ」
佐川さんが立ててあった譜面台を小西の方に向け、防戦している。
「でも脱ぐっていっていますよ?」
「脱がれるのやぁ」
そう言われると助けにいけない。
「佐川さん、ぼくはいつでもいいですよ?」
なにがいつでもいいのか、聞かなかった。聞きたくなかった。
「さぁ、佐川さん早く。俺の尻を叩いてください」
なんだ、なんだと教室から人がわらわら出て来た。中には音楽室から駆け付けた田辺さんもいる。
「尻を早く! ズボンを履いて欲しいなら、一回叩くだけで履きますから」
「ホントに? ホントだな?」
「さぁ早く。『このクソ豚、汚い尻を、ミミズばれだらけにしてやんよ』って言いながら!」
「さっきより要求上がってるし、やだぁ、もう止めてよ」
佐川さんがいやいやをして、小西から距離を取ろうとしたら、譜面台を取り除けすかさず小西が腕を伸ばして佐川さんの腕をつかんだ。
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