最終話 フルートの山城さん

『それではプログラム十九番……』


 このプログラムが最後だ。俺は舞台に目をやっている。

 雅は泣いている。俺も少しくらい泣いても許されるだろう。



『……二年五組の小西……』



 ん、おい待ってくれ。



「雅!」


「なに? もう私みんなに会えないと思うと涙だよー」

 暗に邪魔するなと言っているようだったが、友人が勇気を出している。ここはちゃんとしなくてはいけない。



「雅! 山城さん!」

 会場は騒然としている。そりゃそうだ。


 学年どころか学校で一二を争える小西が舞台に立っている。そしてこのパターンは告白だろう。ファンクラブは卒倒しているに違いない。しかもプログラムの最後ってどんな手を使ったんだよ、小西。



『俺、俺の学校生活はたくさんの人に支えられました。えっと、いや、こんなことが言いたわけじゃなくて』



 体育館の四方八方から、頑張れが響く。



『こんな俺に気になってくれている女の子がいます。正直、最近想いを知ったので好きかって聞かれても分かんなくて』



 吹奏楽部の部員もなぜか真剣に聞いていた。誰も泣いていない。



『でも好きって言ってくれる人には誠実でいたいです。なんで、吹奏楽部の山城さん』

 キャーっと悲鳴が聞こえた。


 ざわざわとしているので、マジで誰か卒倒したのだろう。小西のせいで保健室は大パニックだろう。



『俺とキャンプファイヤー過ごしてください』



 ほら、ほらと吹奏楽部の面々で山城さんを押し出した。戸惑う山城さんに雅が、

「山ちゃん、ほら、小西くんは頑張ったよ」

 山城さんは深く頷いて、舞台へと歩き出した。






『ありがとうございました。これで本年の文化発表会は終了です。さっさと下校してください。片付けは明日しましょう』



 いつもの屋上も人はまばらで、少し前に山城さんと小西がいた。非常階段の扉をそっと閉めた。これで一件落着だ。



 ん、何か忘れている。あっ!



 やべ、キャンプファイヤー雅と見なくっちゃ!





「遅い」


「ごめんなさい」


「伝説のこと知っていたでしょ」


「知っていました」

 今までにないほど、神妙な顔を俺はしていたと思う。



「うーん。山本法廷は小路被告人に対して判決を述べる」


粛々しゅくしゅくとどんな刑罰でも受け止めます」


「小路被告人、主文遠距離恋愛を申しつける」

 愕然とした顔をしていただろう。一番恐れていたことが起きてしまったのだ。



「一週間に一回、受験二か月前は一か月に一回しか会わないから、もっと少なくなるかもしれないよ?」



 死んだ。



「でもまぁ、ずっと好きだけど。信じて待ってくれる?」

 答えはいつだって決まっている。



「もちろん」


 ずっと待ってるさ。




 フルートの山城さん 完

 イケメン男子小西くんは吹奏楽部で恋をしたい! 完

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イケメン男子小西くんは吹奏楽部で恋をしたい! ハナビシトモエ @sikasann

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