第3話 コントラバスの三原さん
「どうだ? 憧れの先輩の本性は」
「……さいていだ」
小西は唇を噛みしめ、絞り出す様な声で言い切った。
「ここまで追い込む気は無かったんだ。ただ予想以上に協力者が多くてな」
「つまり、あれなんだな」
「そう、あれだ」
「三原さんを尊敬する人はいないんだな」
「要するに嫌われ者だな。本人は心優しく下級生男子からモテモテの先輩だと思っている節はあるが、無自覚って恐ろしいよな」
「……帰る」
「うんまぁ、気をつけてな」
流石に小西にかけてやれる言葉は無かった。
その背中は物悲しくて辛そうだったから、多分どんな言葉をかけても的外れになっただろう。
「で、なんでこんな寒い日の貴重な昼休みに俺たちは屋上にいるんだ?」
年は明け、一月。まだ寒さも引かない昼下がり。俺はなぜこのイケメンクソやろうに呼び出されているのだろう。
「トランペットの松井さん、今日も守ってあげたいほどの可憐さを醸し出してるな。うーん、抱きしめたい」
松井さんとは三原さんと同学年のトランペットの先輩だ。
「お前、あれから一週間しか経ってないぞ。三原さんはいいのか?」
「あの人は表裏あるって最初から気づいてた。けど、松井さんにはそんな雰囲気は感じられない。それに性格じゃないって気づいたし」
わかってたなら最初からやめておけと蛇足めいたことは口にしない。
「え?」
「やっぱり見た目重視だわ。性格なんかコロコロ変えれるしな」
当初の潔さはどこに行った。
「次は体って言うんじゃないだろうな」
「次は無いよ、今が本命さ。それでさ、小路にお願いがあるんだ」
やれやれわかっている。
「身辺調査ならお断りだ。ハイリスクローリターンだからな」
口ではこう言っても俺は小西といることで女子から話しかけられたいのさ。
「そこを何とか頼むよ。吹奏楽部だろ、小路しか頼れないんだよ。昼飯一週間分、俺が持つからさ」
「あぁ、そこまで言われたら仕方ないよな」
仕方がない。本当に困ったやつだ。
「さすが、話が早い!」
「まぁ、でもどうなっても知らないぞ」
どうなってもな。
コントラバスの三原さん 完
イケメン男子小西くんは吹奏楽部で恋をしたい! 続
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