第21話 オーボエの佐川さん

「と、いうことらしい」


「てことは俺、やっぱり押してしまったんだな」


「そうみたいだな」

 馬鹿でもわかるだろうよ。


「あぁ悔しいな、こうして好機を俺は逃すんだ」

 好機が来ていたのか、それに俺はびっくりだ。



「なんか今、失礼なこと考えただろ」


「考えてない」

 こういう聡いところは嫌いだ。


「本当か?」


「この胸に誓って本当だ」

「それで今回は終わりか?」

 こんな余計なことを言わなければあんな騒動は避けられたはずだったのに、小西的に言えば、この瞬間俺は好機を逃したのだ。


「いやもう一ターン残ってる」


「どこに?」


「小路君、一緒に吹奏楽部に来たまえ」

 一から吹奏楽部に行ってくれれば、話は早く済んだことだらけだ。


「いいけどお前、すごくがっかりすると思うよ」

 今回に限ってはな。





「たーくん、昨日のデート楽ちかったでちゅ」


「さーちゃん、もう部活始まってるから、練習に行ってね」

 小西が信じられない物を見ていたようだ。



「なぁ嘘だろ?」


「本当なんだよな」

 小西の身体が震えている。驚愕という言葉が似合いそうだ。


「だって佐川先輩だぞ」

 小西は信じられないと言った風だ。


「山本さん、連行お願い」

 たーくんもとい田辺さんは雅を促した。


「はいはい、さーちゃん行くよ」

 雅はさーちゃんもとい佐川さんの腕をがっちりつかんだ。


「うええん、もっとたーくんと遊ぶの!」


「さっ、ついていくぞ」

 雅と佐川さんの後ろについて行こうとすると、小西が固まっていた。


「お、おう」

 しばらく行くと、雰囲気怖そうなサッカー部の副キャプテン。




「おいクソ、俺で抜いただろ」


「抜いてないです」


「じゃあ、そのイカ臭いタオルはなんだ?」


「これは自分の汗で」


「汗でございますだろ?」


「はい、そうでございますブヒィ」





「これだよ。こういうのを待ってたんだ」





 様々な男たちを服従させ、従順な豚野郎には靴下を目の前に垂らし臭いをかがせる。


 そのプレイの素晴らしさ? に小西は心躍らせたようだ。練習室について中に入ろうかって時に小西が佐川さんに話しかけた。

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