概要
僕らが投げるボールの軌道は、必ずしも直線でなくていい。夢中でさえいれば
僕は小学生だけど、これでも立派な受験生。
放課後、塾のない日は図書館に通って自習するほどには真面目な子ども……だった。真面目なのはいまも変わらない。でも、去年の秋に謎の男と出会って以降、僕は図書館通いをやめてしまった。
いよいよ試験も間近。準備万端、受かる気満々。四月からの新しい生活を想像して、膨らむ期待。
だけど、これでいいのかな……?
悩める小学生の日常を描いた短編小説。
(アルファポリスの「第5回ほっこり・じんわり大賞」にて奨励賞受賞作品)
放課後、塾のない日は図書館に通って自習するほどには真面目な子ども……だった。真面目なのはいまも変わらない。でも、去年の秋に謎の男と出会って以降、僕は図書館通いをやめてしまった。
いよいよ試験も間近。準備万端、受かる気満々。四月からの新しい生活を想像して、膨らむ期待。
だけど、これでいいのかな……?
悩める小学生の日常を描いた短編小説。
(アルファポリスの「第5回ほっこり・じんわり大賞」にて奨励賞受賞作品)
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!どこか懐かしい日々を描く、在りし日の話
主人公は中学受験を控えた小学生。いくら受験生といっても小学六年生、自分で決めたこととは言えど、思うところがないはずがない。
落ち着いた丁寧な文章で描かれる主人公の心情、小学校の友達、図書館のこと。よどみなく流れる水のようであり、すっと入り込んで懐かしさを覚えさせる。
タイトルにもなっている「ボールの行方」は、第8話の副題でもある。彼の投げたボールの到達点、外で遊ぶ彼らのボール。この「ボール」とは何を表現するものなのかを考えてみることをおすすめしたい。
受験とはある意味、人生を決めるのかもしれない。たとえ小学生であっても葛藤はするだろう、悩むだろう。
そして主人公の中にある純粋さ。それはきっと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!子供らしい機微、残酷さ、純粋さ…
少年の純粋さを描いた物語ですが、怜悧と感じさせられる文章で書かれているため、ともすれば「純粋さ」という単語からイメージできるものからかけ離れたものまでも読み取ってしまいますが、その違和感こそ、自分が年を重ねた事で捨てた、或いは見下したものだと思わされました。
その違和感を乗り越えられれば、冷徹なまでに人を観察したものだと感じさせられる文章は、自分の子供時代を思い出さされます。果たして自分が小学生の頃、幼稚と思っていた人がどれ程いたでしょうか? 万能感を懐いていた人、根拠のない自信に溢れていた人の方が、遙かに多かったはずだ、と。
子供の純粋さには、そういう傲慢さ、また大人になった目で…続きを読む