子供らしい機微、残酷さ、純粋さ…

 少年の純粋さを描いた物語ですが、怜悧と感じさせられる文章で書かれているため、ともすれば「純粋さ」という単語からイメージできるものからかけ離れたものまでも読み取ってしまいますが、その違和感こそ、自分が年を重ねた事で捨てた、或いは見下したものだと思わされました。

 その違和感を乗り越えられれば、冷徹なまでに人を観察したものだと感じさせられる文章は、自分の子供時代を思い出さされます。果たして自分が小学生の頃、幼稚と思っていた人がどれ程いたでしょうか? 万能感を懐いていた人、根拠のない自信に溢れていた人の方が、遙かに多かったはずだ、と。

 子供の純粋さには、そういう傲慢さ、また大人になった目で見れば他者を見下しているように映ってしまうものも含んでいたはずだ、と思い出させられると、この物語の美しさに気付かされました。

 どれだけの人が、この残酷さに気付いているか。

 そのうち、どれだけの人が、この残酷さを美しく書く事ができるのか。

 この物語は、長所も欠点も短所も何もかもを含んだ「純粋さ」を書いてくれています。

 余人が書いたならば、この純粋さに肯定ないしは否定を感じさせる文章になるのでしょうが、この物語は否定も肯定もしていないように思います。

 しかも無味乾燥としないところに、自称・純文学が溢れる今、本当の純文学だと実感させられました。

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