光星空は、お母さんを生き返らせるために魔法の勉強を頑張る男の子。
ですが空が暮らすのは、魔法の国ではなく現代日本。「魔法の勉強をしているなんて変だ」とクラスメイトにからかわれ、先生にも気持ちをわかってもらえず悶々とした日々を送っていました。
そんなある日、空は星降堂というお店と本物の魔女に出会い、お店ごと異世界に転移!
元の世界に帰るために魔女の弟子となり、様々なお客さんたちと出会います……。
異世界で出会うお客さんたちは皆、個性豊か。そして、それぞれが葛藤を抱えています。
連作短編形式で語られる物語は異世界での出来事ではありますが、人(じゃないことも)の悩みはどの世界でも共通です。
魅力的なキャラクターたちの物語を見守れば、現代社会を生きる読者の心にも深く刺さるものがあるはずです。
また、少しずつ成長していく空君の姿も頼もしいですよ!
物語を通じて小学生空君の一人称で進む本作は、物語の内容もさることながら、語り口もどこか優しく、しっとりと胸に響きます。
読み終えた時、なんだか心が浄化されたような気持ちになる。そんな素敵な物語。
大人にも子どもにも、幅広い方々におすすめします!
ひとこと紹介の言葉が浮かんだのが、この物語における魔法が「子供の憧れ」であるからです。
ファンタジーによくある攻撃魔法でも回復魔法でもなく、強いていうならば「癒やす必要のないものにする」という魔法だと感じます。
そこにある印象が、輝いているのではなく、光っているという事でした。
文章から受ける印象は、子供にとっての標ともいえるもので、それは輝いて手を引っ張るものでないからです。
輝いて視線を集めるのではなく、ぽっと光っていて「こういうのもあるよ」と投げかけ、語りかけ、そして子供が自分で選択する事を大切にしている…そういう優しさや、ある意味に於いて厳しさも含んでいる…そう感じられました。
主人公は魔法使いに憧れている小学生の空。
空はある願いを叶える為に、図書館で借りた本を頼りに魔法を試していますが、いつも上手くいきません。
そんな彼が偶然出会ったのは、不思議な雑貨屋さんのようなお店「星降堂」と店員の魔女さんでした。
魔法やアイテムなど、子供の頃に一度は憧れたキラキラしたものが詰め込まれているような世界観が本当にとってもかわいくてわくわくします!
かわいらしくて魅力的な世界観のお話を書くのがお上手な作者さんなので、このお話もあちこちにそういった要素が見られて、いつの間にかお話に夢中になってしまいました。
主人公の空くんの視点で書かれているので、お話の始まりから少しずつ変わっていく彼の心境や周囲の人々に対する意識などが、とても丁寧に描かれています。
文章も主人公の空くんの幼さを表現していて柔らかくて優しくて、心理描写もゆっくり読み聞かせているように伝わってくる感じがして、とても好きです。
大人から子供まで楽しめますし、一緒に読んでも楽しめるお話ではないかと思います。
是非一度読んでみて欲しい素敵なお話です!
主人公は小学五年生の光星 空(みつぼし そら)。
魔法使いに憧れ、魔法の勉強をするという夢想家な面のある男の子。
あるとき空が見つけたのは、不思議なものを売っているお店。
その不思議なお店で『魔女』の店主と出会い、物語は大きく動き出す……
空くんの一人称で語られる物語のため、地の文にひらがなが多いのも少年の心情が表れており、全体的に柔らかい雰囲気がある作品です。
綺麗で不思議な世界観を描くのが非常に上手い作者様で、空くんが赴くキラキラした世界や、不思議な魔法具の描写を読んでいるだけで楽しい!
空くんが色んな世界を訪れ、そこで困っている人々と交流しますが、同じ作者様の作品の世界が出てくるのも楽しめる点です。
鳥の獣人である鳥子さんや、星屑の結晶に火を点けると爆発する場面が出るなど思わずテンションが上がるときも笑
出てくる世界は独特でも、そこで描かれているのは親子関係や将来の夢、臆病な気持ちなど現実世界にも共通する普遍的な問題。
その問題に苦しむ人に一生懸命に寄り添う空くんの真摯でやさしい姿を目にするだけで、何だかこっちもやさしい気持ちになれます。
空くんと魔女さんの心温まる旅を、そっと見守ってほしい作品です!