どこか懐かしい日々を描く、在りし日の話
- ★★★ Excellent!!!
主人公は中学受験を控えた小学生。いくら受験生といっても小学六年生、自分で決めたこととは言えど、思うところがないはずがない。
落ち着いた丁寧な文章で描かれる主人公の心情、小学校の友達、図書館のこと。よどみなく流れる水のようであり、すっと入り込んで懐かしさを覚えさせる。
タイトルにもなっている「ボールの行方」は、第8話の副題でもある。彼の投げたボールの到達点、外で遊ぶ彼らのボール。この「ボール」とは何を表現するものなのかを考えてみることをおすすめしたい。
受験とはある意味、人生を決めるのかもしれない。たとえ小学生であっても葛藤はするだろう、悩むだろう。
そして主人公の中にある純粋さ。それはきっとおとなになるにつれ失うもので、だからこそこの作品を読んで在りし日を思うのかもしれない。
ぜひご一読ください。