第2話「清々しさ」
山内さんはああ言っていたけど、都筑はけっこう気をつかってくれている。
僕が中学受験の勉強に忙しくしているのを知ってから、本当は毎日遊びたいのを我慢して、都筑はドッジボールに誘う回数を減らした。もちろん直接聞いたわけじゃないけど、三年生のときからの長い付き合いだから、多くを語らなくても僕には彼の気持ちがだいたいわかる。
でもまったく誘わないのではなく、こうして週に一度ぐらい声をかけてくれるのは、
なんにしても、さほど口数が多いわけでもない僕のことを特に親しい友達と思ってくれて、授業が終わるとこうして一番に話しかけに来てくれるのはありがたいことだった。そして、たとえ断ったとしても都筑はぜったいに嫌な顔をうかべたり、それ以上しつこくしてくることはない。なんだか、根っからの清々しさみたいなものを備えているんだよな。
長い付き合いという点では、山内さんもそうだ。
彼女とは幼稚園から一緒なので、都筑以上によく知っている。小学校に上がってからは三、四年生のときにいったんクラスが離れたけど、それ以外は一緒だ。なにより親同士の仲がよくて家も近いから、学校外でもそれなりに交流がある。いわゆる幼馴染みってやつだ。
山内さんはサバサバとした
山内さんが、みんなの前でも僕のことを“覚くん”と下の名前で呼ぶのは、だから彼女らしいといえばらしい。
僕のほうはなんとなく恥ずかしくて、みんながいるところでは“山内さん”と名字で呼ぶんだけど、ほかに誰もいないときや家の近所で互いの親と一緒に会うときなんかは、僕も“
人の少なくなった教室で座ったまま伸びをしてから、図書室に返す本を持って教室をでる。廊下にでると、少し開いたガラス窓からもれる二月の風が僕の頬をひゅうっとなぜた。
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