狭隘の三十一字の和歌にさへ宇宙はあるべし我がこゝろ棲む

茫邈の宇宙と無窮の永劫のありしゆゑなり我うまれしは

狂瀾の歴史の大河に雫ありこの生涯こそ我にはすべて

幾億の全人類と邂逅し訣別するなり孤独にあらず

絶望と狂気の渦中もわれ死なず愛しきものが生きたまふゆゑ

巍然たる高峰やまた縹渺の絶海ゆくゆゑこゝろよ死さざれ

激盪も颶風も怒濤も戦乱も殺せぬたましひ汝には死さむず

大地には幾億万の歌集あり我が人生は我が詠むなり

永劫に巨億の生命が生滅す枕詞は『はかなき』といふ

万物が無涯の宇宙で輪廻せば我は逢ひたしまたこの一首に

万物も一首の和歌に詠まれうる無常のみこそ全貌なれば

幾千や幾万といふ歳月が経ても和歌あり悲劇があれば

天と地の開闢ならず終焉ならず現代に生まれし現代に死すのみ

廃墟たる我がたましひも復興す青春といふ戦争ののちに

絢爛の銀河が夜空に明滅す真昼時には死せるがごとくに

極楽か地獄なりやは我しらずただ現世にはみなに死ぞあり

浩瀚の書物を渉猟せむとても叙述はあらず明日の運命の

天に地が人類には神が死に生が宿敵にあり我には我あり

靉靆の雲から無窮の大地へと稲妻どよむ巍峨たるもの撃つ

千年も幾億年も欣求せず百年あれば涯てへとゆくべし

幽邃の渓よりふかく巍然たる峰よりたかくもかなしきこゝろ

鬱勃の絶望さへも希望といふ我が人生も悲劇なるゆゑ

燦爛の太陽さへも昇りてはまた沈みゆく偉人もたがはず

万斛の和歌が生まれし幾億の悲劇がそこに終幕となり

誕生によりて終焉はじまりし終焉おもひてまた誕生す

憂鬱よ！　悲劇よ！　怨嗟よ！　絶望よ！　また逢ひまほし我生きるゆゑ！

輪廻せば百億年の歳月を経ても逢ひたきひともゐる動物もゐる歌集もある

荘厳の文明といふ機関の歯車なるまじ人間なるゆゑ

青春は猛者のごとくに永逝しにけりこの一首をば墓碑とするなり

人生の悲劇も狂気もなかずんば現在はあらむずこの和歌さへも

百億の全人類と邂逅をせずともよからむ汝と出逢へしゆゑ

天と地と光と蔭と生と死と巨億の愛と我の孤独と

万斛の死ありて巨億の生ぞあり我が生涯よ歴史をつなげ

死滅する霊肉としりまだ生きる謎めくものあり人間といふ

ＮＢＣ　ＩＣＢＭ　ＩＲＢＭ　“Why human must kill human?【何故にひとはひとを殺さむ】”

神々の領域にすら人間は到達するらむしかし死はあり

荒野にも廃墟や砂漠や地獄にも咲ける薔薇あり『生命』といふ

「何故に幾億万の生命には終はりがありや」「生きるがゆゑに」

幾億の水滴あらねば縹渺の海原あらず生命と宇宙も

絢爛の最高峰の芸術も匹敵ならず生命の美には

一文字が巨億の生命を救済しまた冒瀆しにけり『愛』といふらし

百億のＳＥＸよりも永劫のＬＯＶＥをば欲すキリストの如

百億のなかで雌雄と性器とが邂逅ひて身篭る生命は奇蹟か

戦争も飢餓も愚行も衝突も涙になりけり人類が青春

幾億の愚行ありけり澎湃の時代の怒濤に消えしのみなり

破滅する運命もしらず誕生す宇宙も銀河も人類も

神々のごとくも魑魅のごとくなる悲劇のものあり人類といふ

神々を冒瀆するほど文明は巍峨たる塔なりいつ崩壊す

幽邃の地球も巨億の人類も華麗におぼゆ滅びゆくゆゑ

万斛の生命も巨億の人類も滅びゆくゆゑいま詠む「愛す」