幽邃の渓よりふかく巍然たる峰よりたかくもかなしきこゝろ

ゆうすいたによりふかく然たる峰よりたかくもかなしきこゝろ


【語釈】

これもおおきく出ているようで、実際には、等身大のうたである。ゆうすいはしずかで奥深いこと。然は途方もなく高いこと。谷よりふかく山よりたかいけれどかなしいこころ、というわけで、おまえのこころはそんなにふかくたかいのか、といわれそうである。といえども、愚生はどんな人間のこころも、谷よりふかく山よりたかいとおもっている。にくたいはこころのうつわかもしれないが、こころはうつわよりおおきくなれる。いわゆる小宇宙、内宇宙である。それでも「かなしい」のもまた、万人共通ではないか。

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