第27話  ゴーストグレイヴ




◇第一層


「───」


何も見えない。

紅太郎はバクラのいる城に突入したが、

暗闇の中をさまよっていた。

城の扉は、紅太郎が入った瞬間に

バタン!っと閉まってしまい、外の零奈とは

一切の連絡が取れなくなっていた。



ガタッ


「ひぃっ!」


物音がするたびに心臓の鼓動がはやくなる。

何か手がかりがないかと辺りを見渡していると、小さな窓を見つけ、そこから外の光が漏れている事に気づいた。

紅太郎は近づき、その光を頼りに周辺を見渡した。


「………!!」


そこにあったのは大量の墓石だった。

全て違う形をしており、見るからに不気味であった。紅太郎は一番近くの墓石をそっと覗き込んだ。


「湊川紅太郎…」


「何故俺の名前が…」


そこには自分の名前が刻まれていた。まるで自分の死を予言するかのように。紅太郎は青ざめ、その場から一歩引いた。唾を飲み込み、再び自分の名前が刻まれてる墓石を見つめる。すると、


「ウセロ……」


「!?」


一つ墓石から亡霊が飛び出してきた。


「ウセロ……ウセロ!」


紅太郎に襲いかかってきた。


「こういう事かよ!」


紅太郎は剣を亡霊に向けて構えた。

そして、襲い来る亡霊を振り払った。

実体が無い亡霊を斬る事は出来ないが、

追い払う事は可能であった。

紅太郎は時間をかけてはいけないと考え、

墓石の間を潜ってぬけた。その先に階段を

見つけ、紅太郎は次の階に進む事が

出来た。




◇第二層


城の二層に到達した紅太郎は、中央に輝く何かがある事に気がついた。


「あれは…」


墓石に中央に、花香が使用していた細剣が

突き刺さっていた。第二層は、中央だけが

光っており、それ以外は暗くて何も見えなかった。紅太郎は細剣に触れ、ぐっと力を

入れて、細剣を抜いた。


「早くお前の主人を助けような!」


紅太郎は、細剣に語りかけ、

剣を持ち、三層へ繋がっているだろう

階段へ進んだ。






◇第三層


またしても墓石が複数配置されていた。

紅太郎は恐る恐る、その間を潜って

行った。三層に到達して少し経った時、

何か気配を感じた。


「ん?」


少し血の匂いがした。

後ろを振り返ってみる。


ギシャァァァ!


「出たなダークドラゴン!」


ダークドラゴン。いや、正確にはダークドラゴンの姿をした亡霊が紅太郎の後ろに立っていた。紅太郎は花香の細剣を足元に置き、

エメラルド色の<ガブリエル>の剣を

構えた。


「<ガブリエル>!

 貫殺衝撃波!」


紅太郎は剣から曲線の衝撃波を放ち、

ダークドラゴンの亡霊を倒した。亡霊は

姿を消し、三層は一気に静けさを増した。


「ふぅ…」


紅太郎は一息をし、剣を戻し、床においていた花香の細剣を再び手に持った。四層へと

続くであろう階段を見つけ、登ろうと思った瞬間、


「え?零奈?」


零奈らしき人影が階段を登って行くのが見えた。紅太郎は零奈かどうか確かめるべく、

その人影を追い、四層へと向かった。





◇第四層


「零奈!」


だが、零奈の姿は無く、ましては

人の気配もなかった。紅太郎は仕方なく

先に進む事にした。

四層は全体が迷路のようになっており、紅太郎の記憶の中にある政府軍の入口を類似するようなつくりだった。


「それにしても似てるな…」


何故こうなっているのか?という疑問を抱きつつも、紅太郎は前へ進む。途中で誰かの

話し声が聞こえた気がした。紅太郎はその声主の方へ振り返ってみる。


「…………」


誰も居ない。

また、別の方向から誰かと誰かが会話して

いるような声が聞こえた。紅太郎はその方角へ目をやる。


「………………」


誰も居ない。というよりかは、紅太郎が振り向いた瞬間に急に静かになる。紅太郎は不気味に感じ、歩く速さを速めた。そうこうしているうちに、五層へ続く階段を見つけ、

先に進んだ。





◇第五層


五層は煙臭かった。まるでこの階だけ、

何か戦争があったかのようだ。

辺りには、相変わらずの墓石と、

戦争の残骸が散らばっていた。


「戦場の跡か……」


紅太郎はこの光景をしみじみと感じ、

恐る恐る進んだ。すると突然、


「うわぁぁぁぁぁ!!」


「!!??」


急に男が叫ぶ声が聞こえた。まるで何かに苦しむかのような。紅太郎は階層を反響させた

声が聞こえてきた方向へ身体こど振り返る。


シン……


静かになった。

紅太郎は恐怖を感じ、一目散に逃げ出した。

六層へと続く階段を見つけ、紅太郎は駆け上った。上がる際に、上の方の階段から足音が聞こえた。





◇第六層


「はぁはぁはぁ…」


紅太郎は息を荒くするほど走った。膝に手をあて、息を整えると、六層を見渡した。

もはや全層共通の墓石があるだけで

六層は開けていた。

すぐ先に七層へ続く階段も見え、紅太郎は

何かに起こる前に六層を通過しようと思い、

七層への階段へ向かって進んだ。


その時、

七層の階段の方から何かに光ったと思ったら、何かが紅太郎に向かって飛んできた。


「!!」


紅太郎は慌てて回避し、飛来物は六層の壁に

突き刺さった。飛来物は柱のような造形を

していた。その飛来物に紅太郎は見覚えがあった。


「これは…<メタトロン>の……」


驚いて、七層への階段の方へ目を向ける。

急いで駆け上がる足音が聞こえた。紅太郎も

それを追うように七層へと続く階段を

上がった。





◇第七層


そこには───


「兄さん!!」


の姿をした邪霊人形が居座っていた。

所々で偽装が目立ち、直ぐに偽物だと

分かった。そうと分かれば話が早い。


「喰らえ!<ガブリエル>!

 アコスティック・ブレイブバード!」


紅太郎は誠太郎の姿をした偽物バレバレの

邪霊人形を一撃で吹き飛ばした。


「はぁ…」


紅太郎は下らない茶番に付き合わされた

気分になり、思わずため息が出てしまった。

それにしても、あの投げてきた柱は

よく出来ていたと思った。

紅太郎は剣を戻し、八層へと向かった。






◇第八層


八層はこれまでの層よりも墓石が多く、

ほぼ全てに「湊川紅太郎」の文字が

刻まれており、紅太郎はバクラへの

怒りがこみ上げてきた。その墓石の

中でも一番大きかった墓石を紅太郎は

見た。そこには文章が刻まれていた。


「湊川浩一を信じるな」


紅太郎は読み上げてまて、首を傾げた。

何かのデモ運動のスローガンかと

思わせる。不思議に思いながら、先に

進み、九層への階段を見つけた。


九層への階段の数メートル手前で見覚えのある顔を見た。


「伊月!」


紅太郎はその名を読んだ。

すると、伊月らしき人影はもの凄い速さで

九層へ続く階段へと駆け上った。紅太郎は

その後を追った。








◇第九層


シンっとしている

周囲がやけに冷たい。

気温も低い。

おまけに伊月らしき姿も無い。


何か気配を感じた。

紅太郎は自身の後ろを振り返る。

そこに立っていた人物に紅太郎は

目を大きく開き、疑った。


「何故だ…何故お前がここに居る…」


そこには、死んだはずのオルガが

立っていた。








    第28話につづく


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