第19話  夜明けの死闘





さっきまでとは別の風が吹いたような気がする。キングダークドラゴンが降り立ってから。


     ぐるるっ


キングダークドラゴンの不気味な鳴き声が二人の耳の鼓膜を刺激する。

「今までのダークドラゴンとは少し違うな」

「でも…ダーク・ウィングの手先で

 ある事にかわりはないな」

紅太郎はそう思いながら、剣をキングダークドラゴンに向け、

「はぁぁぁ!」


が、


    ガシッ


「へ?」

キングダークドラゴンに剣を捕らえられた。

紅太郎の額に汗が吹き出る。

紅太郎が焦る。焦って手が震える。

震えのあまり、手を下ろしてしまった。

下ろした手が何かの感触を感じさせた。、ポケットに何かが入っているのに気が付いた。


「!!」


出発前にヒューズ少佐から渡された近距離用のハンドガンがあった。

そして、紅太郎はこの状況からの脱出策を思いつき、キングダークドラゴンに銃口を向けて思いっきり引き金を引いた。


     バン!!


銃口から煙が吹き出る。


   ぐるぅぅ!!


キングダークドラゴンが獣の悲鳴をあげ、怯んだ。その隙に紅太郎は取られた剣を取り戻し、体制を立て直す。

「くっ…ルキア!無事か!?」

紅太郎は自分の後方に倒れている天使・ルキアに声をかける。

「ふん!私がこの程度でやられる

 訳がないわよ!」

そう言い、ルキアが頬を膨らませて立ち上がり紅太郎に呼応する。


「ルキア!危ない!」

紅太郎は叫んだ


「!!」


キングダークドラゴンが3つの頭から黒い炎をルキアに向けて放った。

近くの地面は次々と燃えていく。

「ルキアぁぁぁ!!!」










◇宿泊ホテル付近


「紅太郎…遅い…」

伊月は倒れた紅太郎が心配になり、紅太郎のいる部屋へ向かったが、そこはもぬけの殻だった。後、花香一人に任せたくもなかった。


「迎えに行こっか」

花香も部屋を出たきり戻ってこない紅太郎が心配であった。後、伊月の部屋への侵入を防ぎたかった。


「…そうだね…」

珍しく二人の意見が合致した。

先生に見つからないように宿泊ホテルを飛び出すと、前方で大きな爆発が起き、二人がいる方向まで爆風が吹いた。

「っ!!」

二人はこの爆風で全てを悟った。

「間違いない」

「この先に」

「「コータロー/紅太郎がいる!」」

二人はそう確信した。

「行こう!」

「うん!」

二人は揃って返事をし、爆風が吹いてきた方向に向かって走り出した。その時、外は暗かった。












◇戦場


「……っ……!!??」

彼女の目の前には一人の少年がルキアを守るように立っていた。

そう、その少年こそ紅太郎である。


「ルキア。大丈夫か?」

「嘘…この人が…私を…」

紅太郎の手には2本の剣が交差するようにあった。正真正銘、紅太郎がルキアをキングダークドラゴンの黒い炎のトライアタックから守った瞬間であった。その証拠か、剣が少し黒ずんでいた。


「紅太郎………」

(この人なら私の力を託してもいいかも

 しれない)

ルキアは紅太郎の背中に抱きついた。


「るっ…ルキア!?」

紅太郎が驚いて、ルキアを振り払おうとしたが、ルキアの力が強く、離せなかった。


「助けてくれてありがとう!」

「そして、この力を使って!」

ルキアがそう言った瞬間に紅太郎の身体の中に何か暖かいものが入った感覚がした。

皇居や伊月の件の時と同じ感覚だった。

それと同時に紅太郎の手から風が吹いた…と言うよりかは風が作れるようになった。


「凄い!ありがとうルキア!」

紅太郎の剣が風に包まれた。

その時、

     

      ぐるるっっ


キングダークドラゴンがしびれを切らしまた再び、炎を吐こうとした。

「!!」

が、

「<ガブリエル>!

   弱砲雷公弁!」

「<カマエル>!

    テリトリー展開!」

花香がキングダークドラゴンの動きを電撃の砲弾で止め、伊月が炎を防いだ。


「二人とも、ありがとう!」

紅太郎は感謝の意を示す。


「感謝する程じゃないよ紅太郎!」

「それより大丈夫?コータロー?」

二人とも走ってきたらしく、額に汗が垂れていた。


「まぁ何とかな」

紅太郎は二人の救援に感謝すると、目線をキングダークドラゴンに向けた。

そして、


「なぁルキア」

「何?紅太郎?」


「俺たちの大事な真剣勝負に横槍を

 入れたあいつをぶった斬ろうぜ」

紅太郎は真っ直ぐ剣を向けた。

「俺が突っ込むから、援護を頼む」


「わかったわ」

言い終わると、2本の剣を握りキングダークドラゴンに向けた。

「行くぞ!」

紅太郎の掛け声で四人は一斉に走り出した。


「<ラファエル>!

  ゴッド・ウィンド・アロー!」

ルキアから巨大な矢が出現した。

周りは風に守られている。


「はぁぁぁ!」

ルキアはそれを思いっきり放った。

矢はキングダークドラゴンに真っ直ぐ向かって行く。


      きしゃぁぁ…


キングダークドラゴンが大きな悲鳴を上げる。怯んで大きく後ろに倒れるような体制になってしまい、3つの頭も苦しんだ顔をして頭を上に向ける。

その空いた腹に紅太郎が2本の剣で斬り込む。

「<ガブリエル>、

 <サンダルフォン>、

 <ラファエル>!

   3連携!!

   ダブルバーサークベルセルク!!」

 



「「「!!!」」」

紅太郎のその技の名前に3人が驚く。


キングダークドラゴンの腹を左、右、回転斬り、上から下へクロス、下から上へクロスと、次々に切り裂いていく。

そのたびにキングダークドラゴンが大きな悲鳴をあげる。

その時の紅太郎の連撃はまるで鬼神のようであった。回転斬撃でキングダークドラゴンの立派な翼が切断された。キングダークドラゴンにもう逃げ場はない。そして、左の剣で上から下へ垂直に切り、右の剣でキングダークドラゴンの胸の辺りに1突きでとどめを刺す。


    きしゃぁ…………


紅太郎はその場から大きくジャンプし、キングダークドラゴンから離れた。


    ドカーン!ドカーン!


キングダークドラゴンから闇の炎が吹き出て、爆発した。その後はキングダークドラゴンの跡形もなかった。


「…………勝った…」

紅太郎の必殺の2刀流連撃技の20発。

後に超能力者の中でも最強技に認定されるのである。その大技で紅太郎は自分の3,4倍はある敵を倒した。


「はぁはぁ……」

段々意識が遠くなっていく。

紅太郎の状態とは真逆に沖縄に日差しがさしてくる。夜が明けた。

綺麗な朝日を見ると、紅太郎はその場に倒れ込んでしまった。

「紅太郎!」











◇終章

どのくらいの時間がたっただろうか。

自分がキングダークドラゴンを倒した事が未だに夢のような事で信じられない。そんな事を考えながら紅太郎はベットから起きがった。倒れて、ホテルのベットに運ばれたのはこの修学旅行だけで2回目という驚き。


「何かパッとしないな…」

そんな言葉を口に出すと、紅太郎はベットの横に貼ってあった貼り紙に気づいた。


「何だこれは?」

普通ここなら、女の子からの告白のラブレターや体調を心配した手紙だったりするんだが、悲しい事に先生からのお知らせだった。


沖縄の天候がとても激しいため、帰り日を1日早めます。目が冷めたら、直に帰る支度をしてロビーに集まって下さい


書いてあった。紅太郎の胸が締め付けられた。その天候とやらは紅太郎達が引き起こしたものだからである。今更、戦いが終わったからもう大丈夫だのとか、俺が引き起こしましたすみませんなどと言っても、誰も信じてくれないし、言う義理もないので黙って支度する事にした。紅太郎は多少の罪悪感を感じながら支度をし、部屋を出て、ホテルのロビーで学校の奴らと合流した。

ロビーで先生のつまらない話を聞き、途中のバスの中や飛行機の中で花香、伊月、ルキアから大丈夫だの、あの技は何なのと、色々言われたが、詳しくは答えずに沖縄を後にした。羽田空港、途中の駅で3人と別れて、ようやく解放されると、重い身体を引きずりながら家に向かい、修学旅行は終わった。


家に帰るまでが修学旅行だ☆









      第20話につづく

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