第13話 上陸
◇政府軍羽田基地中央通路
浩一は中央通路を歩いていた。
「司令。おはようございます」
マクラスキー大佐に挨拶された。
「あぁおはよう…」
適当に返事をする。
「そういえば司令。例の計画はどうですか」
「あぁ順調過ぎて震えそうだよ」
マクラスキー大佐は少々驚きながらも、相槌を打った。
「ヒューズ少佐に沖縄の調査を紅太郎に依頼
するように言ってくれ」
「了解しました」
この時、紅太郎達が修学旅行に行く3日前であった。誠太郎にも同じ伝令がいっていた。
◇同日、神宮高校にて
「………………」
「コータローは私の隣に座るの!」
「いや、私の隣に座るの!」
花香と伊月が紅太郎を挟んでもめてる。
「…………」
「……どうしてこうなった…」
◇数日前…
紅太郎達の学校では修学旅行の話は6月の
下旬頃から始まっていた。丁度、中間試験も
終わり、一息ついた時に。
「えっ…と…7月に行く修学旅行に
ついての話し合いをします」
「今日中に飛行機の席と部屋を各自で
決めてください」
クラスがざわつき始めた。
紅太郎も誰と組もうかと思った時、
「コータロー!飛行機隣に座ろー!」
「紅太郎君!飛行機隣に座ろー!」
花香と伊月が同時に話しかけてきた。
しかも、二人共とも、同じ言葉を同じタイミングで同じ人に向かって言ったことに目を合わせ、沈黙する。
周囲の温度が一気に下がる。
そして、小競り合いを始めた。
「おい…二人共やめろよ…」
紅太郎が止めようとするも無駄な努力だった。一応、二人共、流石に部屋で同じになるというのは不可能だと分かっているらしく、
部屋については口にしなかった。
結局、その日は飛行機の座席は決まらなかった。
◇修学旅行当日…
羽田空港に生徒と先生がいる集団の中で
明らかに目立つ、女子二人が口喧嘩をしていた。花香と伊月である。
飛行機の座席は当日になっても決まらず、
二人は相変わらず小競り合いをしていた。
「はぁ…………」
紅太郎は大きなため息をついた。
内心では、もうどっちでもいいと思っていた
からである。二人の論争に巻き込まれまいと、集団の影に身を寄せた時、空港の柱に見覚えのある人が突っ立っていた。
ヒューズ少佐である。
「やぁ紅太郎君!」
名前を呼ばれて、紅太郎は少佐のもとへ駆け寄った。
「お久しぶりです!」
実に誠太郎との戦闘ぶりである。
「これから出発かい?」
少佐も神宮高校の修学旅行を把握しているらしい。優しく言われ、紅太郎は頷く。
「そうです」
「そうか…」
すると、少佐は少し深刻そうな顔で
口を開いた。
「実は…君達がこれから行く沖縄で
異常な魔力数値が観測された」
またしても事件の香りが少佐の言葉から漂う。
「もしかしたら、沖縄に何かあるかも
しれん」
何かあるから俺に言うんだろ。っと紅太郎は心の中で思った。
「それって…新しい能力者か…」
一つの予想を提示する。
「その可能性もあり得る…」
少佐は腕組みをしながら考える姿勢をとった後、手に持っていたカバンから白い布に包まれた何かを取り出した。
「そこで、君のお父さんから最新型の
ハンドガンを預かった」
「これを君に渡して欲しいと」
今まで、自分の父である浩一から特別にプレゼント等を貰った事が無かった。初のプレゼントが銃って何か嫌だなぁ。そして、紅太郎は今の状況、この場所、これから乗る乗り物の事が頭に浮かび、疑問を少佐に投げた。
「それ…大丈夫なんですか…」
「一応、特殊な金属を使用しているから
航空法には大丈夫だ」
へー。凄い。現代の技術って凄い。
「それに、羽田空港は我々政府軍の
所有だから話せば済む事だ」
要するに金と権力という訳だな。世の中大抵こんな感じですよね。
紅太郎は半信半疑だが、ハンドガンを
ポケットに入れた。
「わかりました。まぁ近接戦には役に
立つと思います」
その瞬間、
「いた!コータロー!」
「さぁ行くわよ!」
紅太郎は花香と伊月に見つかり、両腕を
つかまれて、搭乗口に強制連行された。
「痛えぇ」
そんな三人の姿を笑顔で見送る
ヒューズ少佐。それに対し、紅太郎はそれどころじゃなかった。
◇飛行機内
当便は間もなく那覇空港に到着します。
着陸の際、大きく揺れますので
ご注意下さい。
飛行機でアナウンスが入る。
結局、紅太郎を中央の席に座り、
それを二人で挟むように座った。
飛行機に三人席があった事に紅太郎は再三
感謝した。
「コータロー!」
「紅太郎君!」
でも、サイドからくる二人の叫びのせいで
あまりゆっくり出来なかった。果たして、2人席に座るのと、このままだと、どちらの方が平和であったのだろうか。どっちの席を選択してもほぼ同じ結果、他の男からの視線はもの凄く痛い事に変わりは無かっただろう。
◇那覇空港
ようやく、沖縄に上陸した。
両腕は花香と伊月に取られたまま。
そして、他の男子からの嫉妬の目線が痛い。
「はぁ………」
紅太郎はまたもやため息をついた。
その後、空港を出て、クラスごとにバスに
乗ろうとした瞬間、
ヒュー…
紅太郎に強めの風が吹いた。
紅太郎はそっと、顔を上げ、風が吹いて来た
方角をみた。
「……ハッ!…」
紅太郎は目を大きく開いて、驚いた。
風が吹いて来た方角の空が
割れていた…
第14話につづく
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