第22話  異変

文化祭編②










◇文化祭当日



 「これより第10回神宮高校文化祭

  神宮祭を開催します!」


 「おぉーー!」


大きな歓声と共に紅太郎たちの学校の文化祭が始まった。そんな中で紅太郎は孤独に会場をとぼとぼと歩いていた。


「はぁっどうしたものかなぁ」


紅太郎がため息をはく理由は2つ。

1つは伊月によって勝手に取り決められた剣技大会への強制出場。


2つ目は紅太郎はあまりこのような人混みになれていない事だ。

実際、去年の神宮祭は腹痛を理由に当日は休んだ。その時は紅太郎も1年生でそれほど大きな責任もなかった。


紅太郎がため息をはいて歩いていると、後方から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「ゃん……」


「今年も大した事なさそうだなぁ」


「お兄ちゃん!!」


「うわぁぁ!零奈!」


驚きのあまり、紅太郎は地上にあげられた魚のように飛び跳ねてしまった。


「全く…やっと気づいたよお兄ちゃん」


「バーカバーカ」


零奈は手を腰に当てて紅太郎を小馬鹿にする。

「あぁすまない」


「………来たんだ」

自信なさげに紅太郎は零奈に視線を落とす。


「今年こそお兄ちゃんの活躍をしっかり見な

 いとね」


「まぁ後でお兄ちゃんを揺さぶるネタが

 欲しいってのがほとんどだけどねー」


零奈が少し小さい声で言ったが紅太郎にはしっかりと聞こえていた。人間、こういう事を言われた時だけ耳がいいって本当のようだ。


「おい!今なんか言ったか?」


紅太郎が威圧をかけるも


「なにか言ったって聞く時点で聞こえてた

 ってことだよね」


「無駄な時間をさいてそれ聞く   

 必要あるの?」


「くっ……」


完全に論破され紅太郎は数秒黙った。

まぁ普通に人間の心理はそんなもんである。



紅太郎と零奈が学校の真ん中で兄妹コント

(紅太郎をディスる)をしていると別の方向から紅太郎を呼ぶ女子の声が聞こえて来た。


「おーい紅太郎ー」


「あ!伊月先輩!」


「あ、零奈ちゃん!久しぶり!」

「ゲッ…」


「ん?紅太郎。今何か言いましたか?」


伊月が紅太郎に近づき、むっとした顔をしてくる。

「大体こういう時って聞こえてるんだろ」


「ゲッって言ったでしょ」


「やっぱり聞こえてんじゃねぇかぁぁ!」


紅太郎の声は会場全体に響き、周囲からの白目線が集中した。


「それより紅太郎!」


「はい………」


「わかってるとは思うけど」


「はい………」


「大会会場に行くわよ!」


伊月は紅太郎の腕を掴んで、大会会場のある方向に引っ張る。

「零奈ちゃん。ちょっと貴方のお兄さんを

 借りるわねー」


「えぇいいですよ」


腕を引っ張られながらも紅太郎は最後の抵抗をした。


「俺はコミュ障なんだぁぁぁーーー!!!

 やめてくれぇぇぇぇぇーーーー!!!!」


再び会場内の人達から紅太郎へ白目線が集中した。










◇剣技大会会場


「はぁぁ」


ため息をはいて会場の楽屋を歩く。


「ん?」


何故だろうか

凄まじいオーラーを感じた。室内なので風が吹いてくる訳がない。だが、しかし紅太郎は感じた。

恐る恐る後ろを見てみる。


「は……花香……」


「………」


周囲はステージの準備で騒がしいのに紅太郎は静かに聞こえた。


「その……花香…すまない」


「さっきは……その…胸を…」


「わー!蒸し返さなくていいからぁ!」


花香は赤面して慌てて手を振る。

一泊おいて紅太郎は話を変えようと

仕掛ける。


「花香もこの大会に出るのか?」


「うん。伊月ちゃんに誘われて」


さてはあの野郎はかったな


「俺もだ。奇遇だなぁ」


「コータローもなんだ」


そしたら後方から紅太郎を呼ぶ大会の役員がいた。


「湊川君。順番ですよー」


「じゃぁ花香!行ってくる」


紅太郎は花香にナルシストっぽい言葉をかけて、楽屋を出た。


ステージの上は思ったり広く、会場には人が1000人近くいた。その中に人際目立つ少女が紅太郎に向かって手を降っていた。


「零奈のやつ…」


その少女は先程から紅太郎のあとを追って、この会場に辿り着いた零奈であった。


「それではこれより神宮祭の剣技大会を開催

 します。ルールの説明をします。選手が得

 意の剣技でステージの上に出現する自律ロ

 ボットを倒していきます。技の迫力や威力

 やさらには美しさで採点されます。またこ

 の大会の採点方式は審査員+会場にいらっ

 しゃる観戦者の皆さんなので、より良い選

 手に皆さんも票を入れて下さい。」


「それではエントリーNumber1番

 湊川紅太郎君!」


紅太郎の登場に観客は歓声をあげた。しかし、紅太郎の友人は奇声をあげてステージの上の紅太郎を迎えた。

紅太郎はそのふざけた声に気づいたが、戦略的無視をした。


紅太郎の背中には<ガブリエル>の剣が既にさげられていた。ステージから紅太郎の倍くらいの大きさの自律戦闘用のロボットが出現する。このロボットはテロ対策として各学校に配備されているものだ。普段は授業や演習に使用させる。それにテロ対策用なので、そう簡単には破壊出来ない。


「はぁぁぁ!!」


紅太郎は剣をぬき、ロボットに一直線に突撃した。


「<ガブリエル>!貫殺衝撃波!!」


剣は光り、剣先から刃がロボットに飛び、命中した。耐久値が10万あるロボットに5000ダメージを与え、さらにクリティカルボーナスで+2500ダメージ。紅太郎はこの一撃で7500ダメージを与えた。


「おおおぉぉぉ!!」


会場は盛大な歓声に包まれた。












◇神宮祭開催会場の屋上


「フフッ」


外まで漏れている歓声を笑う者がいた。


「見つけたぞ不思議な人間!」


「このダーク・ウィング四天王のバクラに

 どう対抗してくるのかなぁ」


バクラは右手に闇色の炎を出した。

これこそバクラの操る怨霊である。

これを物体に取り付かせることにより、簡単に味方を作る事が出来る。


「さぁその歓声はいつまで続くかなぁ」


バクラは怨霊を剣技大会会場に送り込んだ。













◇会場内

紅太郎の絶技に会場は大きな歓声に包まれていた。が、何か用があるのか一人の男が紅太郎のいるステージまで上がってきた。


「ん?何か用ですか………っ!?」


その男は紅太郎に殴りかかってきた。

その男だけではなかった。

何故か会場内が大乱闘への化していく。

殴られ、殴り返し、そんな状態が続く。


「きやぁぁ!!」


「死ねーーー」


「殺す」


紅太郎は状況が読めずにしばらく立ち尽くしてしまう。楽屋の方から花香が駆け寄ってきて、紅太郎と、話す。


「コータロー!大丈夫?」


「まぁ何とか」


「一体どうしたの?」 


「わかんねぇ何なんだこれは…」


観客席の方を見ると、零奈が一人で襲ってくる人を<ザドキエル>で静止させていた。


「零奈……」


すると会場外から不気味な声が聞こえて

来た。


「フフッ…混乱してるかい?紅太郎君」


「誰だ貴様!」


「私はダーク・ウィング四天王の一人の

 バクラだ」


「何!?ダーク・ウィング…会場の人間もお前

 が操っているのか!」


「そうだ。このままだと会場の人間は全員倒

 れて死ぬ。君にこれを止められるかい?」


「ふざけるな!今すぐ解放しろ!」


「君の力で止めろと言ったぞ」

すると、バクラの不気味な声は聞こえなくなった。

「………」


「コータロー…?」


「やるしかなにのか…」


「え?」


「すまない花香。力を貸してくれ。」


「でもどうやって?」


「俺達、同じ力の剣でバクラの力を上書きす

 るんだよ」


すると、紅太郎は花香に細剣を出すように指示を出し、自分もさっき振った剣を持つ。


「いくぞ!」


二人は剣を交差させて構えて、せーので

叫んだ。


「<ガブリエル>!!」



     カーン


音の衝撃を放ち、会場内を沈めていく。

乱闘をしていた人間も次々と地面に横たわっていく。


「頼む。皆を助けてくれガブリエル」


しばらく剣を握って、ようやく会場内が静かになった…と言うよりは紅太郎、花香、零奈以外はみんなその場に倒れた。


「零奈!無事か!」


「大丈夫だよ!お兄ちゃん」


倒れた人を避けながら、零奈が紅太郎と花香の元に駆け寄ってくる。


「よかっ………」


「良かったなんて言わせないぞ」

再び、不気味な声が聞こえてきた。

今度はもっと近くで


    ガチャ


会場の扉が開かれ、そこには人形をした魔人が立っていた


「バクラ…姿を現したな…」


「1stミッションクリアおめでとう!

 紅太郎君」


「は?」


紅太郎は言っている意味が全く理解出来なかった。まぁ普通こんな事を言われて、秒で理解しろの方が無謀だろう。


「次はこいつだ」


バクラは右手に次の怨霊を出し、会場の外…東京湾…政府軍の軍港がある方向に投げた。


「まさか…」


「紅太郎君…君の勇姿を見てせくれ…」


不気味な笑いを浮かべながら、バクラは怨霊を投げた方向を指をさす。




      ドカーン!!



軍港の方から何か巨大な物体が降りてきたような音が響いた。そう……

巨大なロボットのような……………









     第23話につづく




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る