第15話  新・沖縄戦

修学旅行編③




     決闘開始!!


両者掛け声と共に剣を抜き、構えた。

段々と激しくなる風と波。ルキアの力によるものだ。その風の一瞬の隙間を紅太郎は捉えた。


「はぁぁぁ!!」

紅太郎はルキアに対して、突進攻撃をかけた。しかし、


      カーン!


命中しなかった。

というより、ルキアは紅太郎の突進攻撃を小型の盾で受け止めてしまった。

そして、中型剣で盾で抑えている紅太郎を

斬り込む。


「!!」

紅太郎は慌ててその場を避けた。


「あら、回避力はあるみたいね」

宙に浮いているルキアに弾き飛ばされ、何とか地面に着くのが紅太郎の限界であった。


「舐めんな…!」

紅太郎はルキアの挑発に乗らず、剣を構え

直す。ルキアは天使と、言っていた。

ルキアの周りからは風のようなものが吹いている。伊月の時にも同じような現象を見たが、今回のルキアのものは伊月のとは格段に違かった。細かく言うと、レベルが違う。紅太郎はそのように感じ取れた。



近接戦が危険だと判断した紅太郎は不意を

つく為に遠距離から攻撃をし、その隙に近づ

こうと考えた。どこか良い場所は無いかと周囲を見渡していると、ポツっと地面に凹みが出来ているのを見つけた。旧日本軍が沖縄戦の際にアメリカ軍の足止めに使用したと思われる地下壕の跡らしき小さな穴を見つけた。


「よし!」

紅太郎はそこに隠れ、ルキアの視界を

惑わせた。視界に入りにくい場所から不意打ちをかけようとした。


「<ガブリエル>

   貫殺しょ……」


しかし、それよりも速く


「<ラファエル>!

  ストリームバースト!」

ルキアは一面に爆裂攻撃をした。


「ぐはぁぁ…」

紅太郎は爆風によって吹き飛ばされてしまった。そして、地面にたたきつけられた。

ルキアは紅太郎が視界から消えたので、自身の前方広範囲に向かって、暴風を放った。これにより、紅太郎の隠れる場所が無くなった。


「隠れても私の前では無駄よ!」

紅太郎は剣で身体を支えて立ち上がる。

さっきの衝撃で出来た傷も直ぐに

自動回復した。


「<ラファエル>

  エアーカッター!」

ルキアが中型剣を上から下へ振り下ろした。

そして、紅太郎の貫殺衝撃波よりも大きな

衝撃波が紅太郎を襲ってきた。


「くそ!」


「武装転換!」


「<カマエル>!

 クロスフレイム!」

ルキアのエアーカッターと紅太郎の

クロスフレイムがぶつかりこれまでにない

爆風が発生した。炎と風のぶつかり合いは紅太郎達が立っている沖縄の地の地熱を上昇させた。なので、かえって紅太郎はダメージを受けてしまった。それでも紅太郎はルキアの一瞬の隙を狙って畳み掛ける。


「よし!今だ!!」

   

「武装転換!」

  

「<ガブリエル>

 アコスティック・ブレイブ・バード!」

紅太郎の背後に巨大な羽が出現する。

剣は大きく光った。そして、さっきの衝撃で出来た煙の中へ突っ込んで行く。

しかしルキアはこれもまた受け止めた。

中型剣と小型盾を重ねて、紅太郎の突進攻撃

を止め、剣を紅太郎に向けた。剣先からは水泡を作り出した。


「くっ…」


「痛ぁ!」

紅太郎は怯み、さらに突進攻撃の体制が崩れ

重心が安定しなくなった。

その怯みを見てルキアは

紅太郎にとどめの攻撃を仕掛けた。


「<ラファエル>!

 メガストリーム!」

ルキアは紅太郎を地面に打ち落とした後に、

中型剣で波を操り、剣先に集中させた。先の風同様に、水はルキアの周りに蓄積し、一つの塊として紅太郎へ向けられた。

それを発射させた。


     ドカーン!


風で周りの木々が次々と倒壊していく。

その大津波はあらゆる物を飲み込んでいった。先程の地熱は一瞬にして冷めた。

更には、ルキアが沖縄の地に足を入れた時よりも大きなクレーターが出来た。

紅太郎はクレーターの中心に飛ばされた。


「ぐはぁ…」

手も足も出なかった。


「くそ!………」

水に飲まれた紅太郎はクレータ付近まで流され、そこでふらついた。





紅太郎はクレーターの中心で倒れてしまった…
















……………

「一人の人間が2つの精霊の力を使う

 なんて…………」

   






「こいつ、本当に人間か…………」

ルキアは誰にも聞こえないくらいの声でそう言った。残った音は沖縄の海の波の音だけであった。









     

       第16話につづく  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る