第14話 来訪者
紅太郎が見上げた空は晴天の空だった。
沖縄の潮風が全身を揺らす。快晴。これほど嬉しい状況は他にない!そう思っていた時期が紅太郎にもあった。
しかし、普通の青空では無かった…
空が
割れていた…
ふと、その時に紅太郎はヒューズ少佐が羽田空港で言っていた言葉を思い出した。
沖縄に何か起こるかもしれない…と、
だからこそ少佐は紅太郎に依頼して来たのであった。思考よりも先に身体が動いた。そして、思いっきり地面を蹴った。
「くっ!」
紅太郎はその割れた空に向かって全力で
走った。もう息が切れるくらいに。
「あ!コータロー!どこ行くのー?」
紅太郎がクラスの集合場所から離れて行くの
見て、それに気づいた花香と伊月が後を追う。そして、数分走った後…
空の裂け目の真下に到着した。
その瞬間、
ビュー!
凄まじい突風が三人を襲った。
空がガラスのように割れていく。
紅太郎は風の激しさに目を瞑ってしまった。
そんな紅太郎を守るように伊月が踊り出た。
「<カマエル>!」
「デーモンシールド!」
伊月がそう言うと、三人の前に巨大な
バリアが出現し、風から守った。気づけば、花香も伊月もクラスの集団から抜け出し、紅太郎の隣まで来ていた。
なんとか風を防いだが、目の前の光景は
ガラリと変わっていた。
地面には大きなクレーターが出来ており、
その上で誰かが宙に浮いていた。
その人は片手に中型の剣を持ち、
もう片方には、
小さめの盾を持っていた。
風に揺られる青い髪。凛とした目。彼女を中心とし、風は周回をしていた。
「お前は誰だ?」
紅太郎はもしかしたらダーク・ウィングの
手先かもしれないと思い、問いを投げた。
しかし、その浮いている人…彼女は何も答えずに、盾を降ろし、風を起こした。
凄まじい強さだ。
何故だろうか、その女は紅太郎と花香があの日に出会った精霊の少女によく似ていた。
「何だ貴様…」
「まずはお前から名乗れ!」
その女はそう言い、剣をこちらに向けて来た。天気は徐々に崩れ始めているが、僅かに太陽はさしている。その小さな光が剣に反射し、紅太郎達は一瞬、目を瞑ってしまった。
「俺は紅太郎!」
「ダーク・ウィングを倒す為に戦う
者だぁ!」
自称だけどね。
紅太郎が名乗ると、その女は少し驚いた顔を
した後、
「私はルキア!」
「天使だ!」
「天使!!!」
紅太郎はその言葉に凄く驚いた。
この女…ルキアが人間では無いことに…
「ルキア!お前は何故ここに現れた?」
もしかしたら、また誰かに力を与える為に来たのか…紅太郎の思考がまず最初にそれを提示したからである。紅太郎にとって戦力が増えるのは嬉しい事だか、勿論そいつを戦いに巻き込んでしまう。それが紅太郎の気にさわるのだった。
すると、ルキアが上から言う。
「特別に話してやろう!」
ルキアは剣をおろした。
「私はダーク・ウィングを倒す為に
異世界から来た!」
紅太郎はまたもや驚いた。
自分とルキアがほぼ同じ目的だということに。そして、羽田空港でヒューズ少佐が
言っていた魔力数値の異常な上昇というのはルキアのことだと確信した。目的が一瞬。なら、誰もが考える結末に後は持っていくだけだ。
「なら、俺と協力しないか」
敵の敵は味方だからね。
「断る!!」
即答だった。
敵の敵も敵であった。
「何故だ?」
元々紅太郎の力もルキアと同じ、天使族から与えられたものなのに、何故紅太郎はルキアと対立する必要があるのか。紅太郎凄く疑問に思った。
「これは私の使命だ」
「お前ごとき人間の力を借りる
までもない」
「お前は覚悟はあるのか?」
紅太郎の出す答えは決まっていた。
「あるさ!」
「ダーク・ウィングから皆を守ると
いう覚悟が!!」
紅太郎は大声で叫んだ。もしかしたら、先ほど離れたクラスの集団にも聞こえてしまうくらいに。
「ならその覚悟とやらを見せてみろ」
「あぁわかったよ!決闘だ!」
別に決闘とは言われてないけどね。
「ちょっとコータロー」
「何考えているのよ」
花香と伊月は慌てて紅太郎を止めようと
するも無駄だった。珍しく花香と伊月の考えが一致した。
「何故かわからないが、ルキアに勝た
ねば、ダーク・ウィングを
打ち倒せない気がするのだ」
本当に謎の理論だ。紅太郎は実際にダーク・ウィングの四天王を一人倒しているのだし。
そう言うと、紅太郎は、ルキアがいる方に
歩いて行った。
「私に勝ったら、私はお前と共に行動
しよう」
ルキアが地上の方へ降りる。
「同じ目的を持ったやつ同士がわかり
合えないなんてことは無いことを
証明してやる!」
沖縄の風が切られた。
「「決闘開始!!」」
第15話につづく
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