第23話  強襲波



戦いは…幾多の者達が競い合い、奪い合う。

同じ物を目指し、その障害を排除し合う。

時には、理念の違いから生まれる闘いもある。たが、この少年が狙われる理由。それは先に記述した二つの理由でも無い。彼の存在こそが現界をも魔界をも許さないからだ。









「っ、」


その光景に紅太郎達は唖然としていた。

外で大きな音がしたので、慌てて外に出てみると、巨大なロボットが出現していた。

バクラの放った怨霊が政府軍の基地にいた

巡洋艦にあたりそれが魂を持った状態で具現化したのであった。バクラはその完成したロボットの事をサテライトバーサークと言った。


「さて、そこまで名乗りを上げるなら

 これくらい倒せないとねー」


相変わらずの薄ら笑いを浮かべてバクラは黒い黒い正方形を操作した。

すると、それに応じてサテライトバーサークも動き出した。

10キロ近く離れた紅太郎達から見てもサテライトバーサークの大きさはよく分かった。

まるで、人類文明を破壊しに来た最終兵器のようであった。


「くっ…行くぞ三人とも!」


紅太郎の掛け声とともに、伊月、花香、零奈は紅太郎と一緒に10キロ程離れたサテライトバーサークに向かって走り出した。



サテライトバーサークは前述したとおり、バクラの怨霊により生まれた生きた兵器。その原型は、偶然この時に政府軍の軍港に停泊していた巡洋艦だった。無生物とはいえ、それには政府軍の乗務員の痕跡が多くあったため、この戦いはある意味での同士討ちという悲しい戦いでもあった。



東京・お台場をほぼ壊滅状態にしたサテライトバーサークは敵の紅太郎達…そして主君のバクラの元に一直線に東京の町並みを破壊しながら進んでいる。付近からは忽ち

煙、火災、悲鳴、避難警報が絶え間なく聞こえる。その避難警報の音が鳴る方角…サテライトバーサークに向かって紅太郎達はひたすら走った。


「っ……」


目の前で見て、改めて紅太郎はサテライトバーサークの大きさを再確認した。紅太郎の身長の何倍だろうか。これ以上の被害が広がったらまずいと思い、紅太郎は隣にいる花香に頷いて合図をだした。


「「<ガブリエル>!!」」


二人は声を合わせてそう天使の名を叫び、剣を再び出現させた。そして、お互いに対になっているお互いの剣から光が放たれた。そして、それを大きく振るい


「「連携技!ホライゾンウェーブ!」」


クロスして重なったニ本の光の刃が自分たちの頭上を通り、サテライトバーサークに当てる。そして

   

     ドカーン!



「よし!命ちゅ……」


確かにニ人の放った光の刃はサテライトバーサークに確実に命中した。だが、


「コォォ……」


サテライトバーサークの胴体には何一つ傷はついてなかった。


「っ!」


サテライトバーサークは一歩後ろに下がり、目が光り出した。そして光の砲を放った。

それはまるで世界を無に包む駄罪の光のようであった。


   ドカーン





さっきまで紅太郎達がいた場所に半径3メートルほどが綺麗にクレーターが出来た。

何とかギリギリでかわした紅太郎達であったが多少の衝撃を受け、後方に吹き飛ばされた。


「くそ!硬すぎるぜこいつ」


「ほんっと!牛乳飲み過ぎだよ!」


「いやぁ機械は牛乳飲まねぇぞ…」


花香の発言を紅太郎が最速で突っ込んでいるうちに、サテライトバーサークは第二射を構えていた。が、


「<カマエル>!クロスフレイム!」


「<ザドキエル>!

 アルティメットバースト!」


サテライトバーサークの足元に交差の炎と氷の光が当たり、第二射を防いだ。後方にいた伊月と零奈が支援攻撃を放った。何とか命拾いをした紅太郎と花香だが、戦況は変わらない。先の伊月た零奈の攻撃はサテライトバーサークの攻撃を防いだが、それは至近弾程度に過ぎない。致命傷ではない。

紅太郎は戦況逆転を狙いサテライトバーサークに近づいた。


「連携解除!<サンダルフォン>を召喚!」


花香との連携を解除して、紅太郎の左手に<サンダルフォン>の剣を出現させた。

これにより、紅太郎は沖縄の地以来の二刀流携帯となる。


「無駄だ。サテライトバーサーク。

 全方向レーザー。」


バクラが静かにそう言うと、サテライトバーサークは紅太郎、花香、零奈、伊月に向かってレーザーを放った。紅太郎達の目の前が白で統一された。


     ドカーン!




見渡すと大きな穴がビルに空いている。

かろうじて、防御剣撃のクロスブロックでダメージを軽減させたが、ノーダメージというわけにはいかなかった。


「まだだ…<サンダルフォン>!

 ダーク・アザルト!」


左に持っている剣を振りかざし、紫色の光と共に紅太郎はサテライトバーサークに向かって剣撃をする。


「私も!<ガブリエル>!

 ライトニングピアス!」


花香がそれに呼応し、紅太郎を支援するため、指に拾った小石を載せて電撃を送る。

そしてそれを強く飛ばす。その弾丸は倒壊している瓦礫をも貫通してサテライトバーサークに届いた。


「なら、<カマエル>! 煉獄」


伊月が紅太郎の声に便乗して、大剣を上に持ち上げて炎を作り出す。やがて、それは巨大化しサテライトバーサークに向かって投げる。サテライトバーサークの右の斧を破壊した。


「次、<ザドキエル>フリーズドライ!」


零奈がそれに続くように手で氷を固めてサテライトバーサークの足元に向かって投球する。見事命中し、サテライトバーサークの進行は止まった。


「喰らえぇ!」


そしてそこに紅太郎のダークサキュラーが襲う。


     カキン。


剣と鎌が響く。


「いくらデカくても4対1では攻撃を防ぎきれないだろ。」


「ホントにそう思うかコウタロウ君。

 実際は4対30位なんだよ」


バクラが不意にその言葉を言い、紅太郎は一瞬動きを止めた。


「は?どういうことだ!」


「そんなの本人に聞いてみな」


そう言われ紅太郎は恐る恐る目の前のサテライトバーサークに耳を傾けた……




(私を殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺してコロしてコロしてコロしてコロしてコロしてコロしてコロしてコロしてコロしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてぇぇぇ!)





「っ!!」


紅太郎は驚きその場を離れた。

脳で整理が追いつかない。

そして吐き気がしてきた。


「バクラ!これを作るのに何人殺した!」


「その質問は無意味だ」


「さっき答えを言っただろ」


それでもバクラは余裕の顔を浮かべて紅太郎を高みの見物をしていた。


「お前は必ず殺す!」


紅太郎はサテライトバーサークから目を離してバクラを睨み、バクラのいるビルに駆け上がった。


「<ラファエル!>」


あと一歩でバクラに届くっと思った矢先


「感情的になったら戦争は負けだ…」


紅太郎は後ろの影に気づいた。

いつの間にかサテライトバーサークが自分の後ろにいた。


「ゑ?」


しかもさっき伊月が煉獄で破壊したはずの片手に鋭く光った刃があったのだ。

いつ再生させた…そんな事を考える間もなく…「紅太郎ぉぉ!」花香達の呼ぶ声がする。


「くっそぉぉぉぉ!」


絶望を感じた矢先



「固定技術(オリジナル)契約!発動!」


「防護服を生贄に光球を召喚!」


「吹っ飛べぇ!」


その瞬間何が起こったかは直ぐに理解を出来なかった。1つ理解できたのは、誠太郎が纏っていた軍服がなくなり、いつもの私服姿になり、それで召喚された光球から光線が放たれて、サテライトバーサークを落下させた。


「ん?」


バクラは目の前に現れた誠太郎の姿を見て首を傾げた。まさかコイツが加勢に来るとは。

  



   、、、、、、、、、、

「まぁ目的は果たせそうだし」


そしてバクラはその場から姿をくらませた。




「いいか紅太郎。まずは目の前の敵に集中」


「わかったか」


「わかったよ兄さん」


紅太郎が頷くと花香が近くによってきた。


「誠太郎さん。さっきのは?」


やはり今まで見たことの無い技に花香だけではなく、零奈も伊月も興味があるらしい。


「俺の固定技術(オリジナル)契約さ」


「ある一定のものを犠牲にして

 力を得るもの」


「さっきの光線もそれで放った」


「皆もそれぞれ自分特有のものを持ってるか

 ら見てみたら?」


誠太郎がまるで前から知ってたかのように淡々と話す。


「「「「固定技術(オリジナル)発動」」」」


4人それぞれの手に文字が出現した。

紅太郎は「愚者」

花香は「守護者」

伊月は「鬼神」

零奈は「正義」と


「力は人それぞれ違うみたいだ。これは政府の分析結果だ。だからまぁ使用しないとわから……」


    

    ガキっ…ゴゴゴ…


サテライトバーサークが再び動き出した。


「仕方ない……行くぞ!」


サテライトバーサークが再び全方向レーザーを撃ってきた。


「固定技術(オリジナル)守護者!」


花香がそう叫ぶとシールドのようなものが者共全員を包んだ。


     カキンっ!


サテライトバーサークの攻撃は完全に防がれ、紅太郎達はノーダメージで済んだ。


「すげぇなこれ…」


「サンキュー花香。行くぞ!」


紅太郎と誠太郎の兄弟が前に出て技を放つ。


「連携!クロス衝撃波!」


「<メタトロン>壊滅衝撃波!」


合計3本の衝撃波でサテライトバーサークの腕を止める。


「<カマエル>!」


「<ザドキエル>!」


伊月と零奈も手を組んで。


「メテオストライク!」


「マテリアルバースト!」


伊月が後方からサテライトバーサークに斬りかかり、その傷に零奈がアルティメットバーストの応用技であるマテリアルバーストを打ち込む。


「紅太郎…行けるか…」


誠太郎が紅太郎に状態の有無を確認する


「任しとけ!兄さん!」


呼応し。

紅太郎は<ガブリエル>と<サンダルフォン>を振り上げ、


「<ガブリエル>、<ラファエル>、<サンダルフォン>3連携!」


剣先からかまいたちのような風が出る。


「ダブルバーサークベルセルク!」


身動きを封じられたサテライトバーサークに向かって紅太郎が2本の剣で斬る。

剣を左に右へと回転させ、クロスさせ、大きく回して斬撃する。


「17、18、19、20っ……」


最後の斬撃を畳み込み、紅太郎はその場を離れた。


     


      ドカーン!


「はぁはぁ………」


サテライトバーサークは東京の都市の真ん中で盛大に爆発した。


「すまねぇな犠牲者の人達…」


「安らかに眠ってくれ…………」


紅太郎は前髪で顔が隠れる位に下を向いて爆発した方角を俯く。

だが、



「そんな事をしてていいのかな

 コウタロウ君」


不意にその静けさは破かれた。


「コータローっ」


「花香!」


見るとバクラが腕で剣を作り花香に向けている。こちらから攻撃すれば必ず花香にもあたってしまう。


「この娘を返して欲しけりゃ、俺の罠に

 ハマれ。」


「クソっ」


ダブルバーサークベルセルクを放った反動で紅太郎の身体は重かった。


「ハハハハハハ!」


バクラが笑いながら去っていく。

その中で花香の頭が垂れ下がる。


「花香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」








         24話につづく

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