第4話 政府軍
AM7:00頃
寝起きの気分は最悪だった
「おーにーちゃーん!おーきーて!!」
「ぐはぁっ…」
紅太郎は朝から妹に踏みつけられて目を
覚ましたのだった。内蔵一個吹っ飛んだんじゃね?と思うくらいに一瞬で激痛が走る。
一部の変人以外は不快に思うだろう。
因みに、学校の方は先日の空間の歪みの影響
で臨時休校だった。
「零奈!もう少し起こし方が
あるだろ!!」
「お兄ちゃんに起こしてと言われたから
その通りに起こしました!」
零奈は自慢気にそう言う
そう言えば、昨晩に適当な時間になったら、
起こしてくれと頼んだのを思い出した。
「はぁ……」
「朝食にするから下で待ってろ」
紅太郎は眠い目を擦りながら言う。
「はーい。」
「愛してるぞお兄ちゃん!」
零奈はそう言うと、下に行く階段へ
走って行った。
この通り、妹・零奈は極度な内弁慶で、 外と内では二重人格かと錯覚する程の違いである。紅太郎は寝癖のついた髪を直し、キッチンへ向かった。
紅太郎達の家は今、紅太郎と零奈の二人暮し
父は仕事でほぼ家に帰ることなく、
母は5年前に病死していた。それも母も急死してその当時は紅太郎も零奈も大変だった。
しかも唯一の兄は行方不明に。死の間際に言った母の言葉が頭を横切る。
「そういや、零奈」
「昨日の力は何だったんだ?」
無言の朝食も少し気まずいので、紅太郎は話題らしい言葉をかけてみる。これを話題と言えるのかは分からない。しかし、微妙な空気が流れる。妙な間の後で零奈は口を開いた。
「私もよく分からないだけどね」
「空間の歪みに巻き込まれたと思ったら
ら、前に女性が現れて、力の使い方を
教えてくれて…」
「気がついたら使いこなしてた」
そう言って零奈は「てへっ」って顔をする
「俺と花香とも同じパターンだな」
これからもこのような人が出てくるのかな…
そう思いながら、紅太郎はトーストと
目玉焼きを作り、テーブルにならべた。
「話は変わるが、今日の昼は何がいい?」
紅太郎は場を和らげる為に何気ない日常的な質問を零奈にした。今度こそ〜
「キッズハンバーグプレート!!」
・・・・・・・・・・・・・
零奈は両手を広げて立ち上がって言う。
「ファミレスのメニューじゃないか」
「当店ではご用意出来ません」
紅太郎がきっぱり断ると…
「ゑーお願い!お兄ちゃん!」
しかしその時、紅太郎の携帯が鳴った。
これもまた良いのか悪いのかわからないタイミングに…
電話に出てみると、それは父・浩一の声だった。
「私だ。聞こえるか紅太郎」
「父さん!?どうしたの?」
「悪いが、今から零奈と花香ちゃんを
連れて私の職場に来てほしい。」
「職場ってことは…」
「そうだ。政府軍本部だ」
いや、そうじゃないんだ。
朝飯食いながら、電話聞くこっちの身にもなれよ。テレワークをしている覚えとかないぞ。どんな社畜だよ。
「というわけで今から2時間後に会おう」
「宜しく。」
そう言い渡されると電話が切れた。
はぁ〜嫌だよ〜仕事嫌やぁぁぁ〜
大体この国は仕事好き好き大好き過ぎなんだよ。ニートのニートによるニートのための
ニートな国家。ニートリアを建国すべき。
うん。3日で滅ぶな。
「とのことです。今日はファミレスは
無理です」
「えー。父さん嫌い!私ついて
行かない!」
零奈のわがままに紅太郎は少し呆れてしまった。何でだろうか。ただのワガママに聞こえない。絶対的な拒絶が感じられた。でもそれは深入りしていけない気がした。なので紅太郎は何も問わずに返事だけした。
「はい。そうですか」
紅太郎は急いで朝食を食べ終わると、食器を
片付け、花香にこの事を連絡し、
支度をした。
「本当に行かないのか?」
「行かないわよ!」
零奈は完全にご機嫌斜めだった。
そのまま外へ出た。
紅太郎は家を出て、駅前で花香と待ち合わせた後、本部がある羽田飛行場へ向かった。
この飛行場はかつては旅客機専用であったが、他国の侵入を防ぐ、軍備強化により、戦闘機用の滑走路も増設された。
飛行場の地下に政府軍の東京本部がある。
紅太郎の父はそこの最高司令官だ。
地下のエレベーターを降りて、複雑な通路を
通った先に司令官室があった。
ノックをして入ると父・浩一が
出迎えてきた。
「ようこそ政府軍へ。」
「今日は君達にもダーク・ウィング
の存在を知って貰うために呼んだ」
一つ言葉が途切れてから
「そういや、紅太郎。零奈は?」
浩一は呼び出したはずの零奈の所在
を聞いた。
「断られました」
「まぁいい。とりあえず聞いてくれ」
「我々はここ数日、空間の歪みの発生源付近
を夜間調査した」
「そして、その付近で謎の魔物の組織が
あり、その名はダーク・ウィングで
あること。さらに、その本拠地らしき
ものを発見した。」
不思議で仕方ない。
「父さんは何故ダーク・ウィングの存在も
俺が能力者である事も知ってるんの?」
紅太郎は父である浩一にダーク・ウィングの存在も能力者の話も一切していない。何?
もしかして新手のストーカー?
愛が深い。ゲイボルグのボルグが取れる。
「普通では人間の科学力ではダーク・ウィン
グの存在は分からない。だが、我々は前例
を知っている。それも近くで見た。だから
お前も花香ちゃんも零奈も能力者になった
のではと予想していた。それはド真ん中に
当たった。」
凄い予測能力だ。他の事に使った方が絶対にイイ。うん絶対。
「まぁゲートのセンサーで確証したけどね」
浩一は「てへぇ」と顔で誤魔化した。
いや、全然可愛くないぞ中年のおっさん。
女の子がニコッと笑うと可愛いかもだけど、男がニコッと笑うとキモいのは昔からの掟だからな。ココ重要!テストに出るよ。
「それはそうと………」
浩一は話を続けた。無視かよ。
「我々はこれからその地を攻撃しようと
思う……」
数秒の間、基地内の空気が静まった。
第5話につづく
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