第3話 <ザドキエル>
紅太郎達は帰路にたった。
正直、少女…いや天使ガブリエルが言っていた言葉は自分たちにしか出来ないって言われたがそれは本当なのかと思い、まだ100%信じきれていなかった。そんな事を考えながら最寄りの駅に向かった…。
しかし、突発的災害の影響で電車、地下鉄は
全線で運転を見合わせていたので徒歩で
帰ることに。まぁある程度は紅太郎も予測していたが、まさか帰るまでに使う公共交通機関全てが止まっているとは思わなかった。
家は東京南部なので紅太郎たちが通う神宮高校の南にある大きな若者の町……渋谷に出ることにした。
しかし、渋谷に出ると大きな悲鳴が聞こえた。
「これは……!?」
スクランブル交差点の真ん中に人が横たわっており、それを襲うかのように獣が近くで暴れていた。その獣は紅太郎も花香も見覚えがあった。
全身が黒い大きな獣。
翼と尻尾の生えた大きな獣。
恐怖と絶望を与えるダーク・ウィングの獣。
先程、自分達を襲ったダークドラゴンが
渋谷を歩いている人を殺そうとしていた。
ダークドラゴンの翼の音。
恐怖に怯えて悲鳴を叫ぶ人々。
それはまるで地獄絵図であった。
いや、無限地獄を目の前で見てるの方が適切な表現だろう。それぐらい絶望的な状況だった。
だが、紅太郎と花香に迷っている時間なんかなかった。ぐっと拳を握って、ダークドラゴンのいる方に目を向けながら、花香に言った。
「あの天使が言ってたこと…」
「実行するしかないようだな」
花香は紅太郎の言葉に呼応し、深く頷いた。
「自分の力を信じて戦おう!」
今、持っているその剣で人の命を救えるなら
その力とやらを使おうと紅太郎と花香
考えた。
紅太郎はエメラルド色の剣を、花香は
細剣を抜き、構えた。
二人の剣は形は違えど、光が反射するほど透き通った真っ直ぐな剣であった。
「いくぞ!!はあぁぁぁぁ!」
「せやぁぁぁぁ!!」
剣が光り、大きな力を感じた。
紅太郎は左から、
花香は右から
Xの字を描くようにダークドラゴンに
切りかかった。
「………」
「きしゃゃゃぁぁっ……」
ダークドラゴンは即死だった…。
「…凄い…!」
「これなら…いけるかもしれない!」
はじめての実戦でこれ程の威力を発揮でき、二人は自信がついた。
そう言ってるうちに次の軍団が迫った。
「あ…!来たぞ!」
「任せて!」
近くに迫ったダークドラゴンを花香が細剣で
倒した。それは覚悟を決めたジャンヌ・ダルクのように美しい姿だった。
紅太郎は花香に少しの間、見惚れていた。
が、
「うわぁぁ!!」
「コータロー!」
紅太郎は背後からダークドラゴンの一撃を
くらってしまった。背中から全身に痛みがはしる。身体の弱い人なら一瞬のうちに倒れ込んでしまうだろう。だが紅太郎は違う。
背中に出来た傷口から炎が噴き出し、
速攻で治癒した。
「これが…自動回復……」
紅太郎はこんな素晴らしい能力が自分に備わっていることに少々感動した。
しかし、状況は変わらず、紅太郎に複数の
ダークドラゴンが迫った。
紅太郎は絶望してしまい、足が
動かなかった。
紅太郎を助けようとした花香も
ダークドラゴンに囲まれてしまい、
紅太郎を助けられなかった。
「やっベーこのままだと…………
剣を振り回して倒して、
俺の腕が疲れる…」
その時だった
「<ザドキエル>!!」
何処からか青く光った光線が
ダークドラゴンに
命中し、軍団が全滅した。
「あいつは……」
自分の目でハッキリ見えた。
確かにあれは自分の妹の姿であった。
「零奈!!」
「あ。生きてるか?紅太郎」
「呼び捨てかよ…」
偶然、学校帰り(戦場)で会ったというギャルゲー的フラグを零奈はあっさりとスルーしてしまった。
「それより、今はあいつらを片付けるわよ」
零奈が指した方向には、花香と交戦中の
ダークドラゴンがいた。
「でも、お前その能力は…」
「いいから!」
「はい…」
紅太郎は妹に押され、
再び剣を握り、ダークドラゴンを
切った。
すると、零奈が手を前に向け、何か冷気のようなものを吸収し始めた。
その反動で周りに落ちていた小さい瓦礫が宙に浮く。
そして、後ろから魔法攻撃をした。
「<ザドキエル>…
アルティメットバースト!!」
零奈はそう言うと直径1メートルくらいの
玉をダークドラゴンに向けて発射した。
ドカーン!!
何事もなかったかのように
見事にダークドラゴンは吹っ飛んで、
消滅した。
「コータロー、零奈ちゃん。
援護ありがとう!」
「うん。」
ダークドラゴンが全滅したことにより、
渋谷の騒ぎは収まった。
気がついたら、周りにはほとんど人がいなかった。
「さぁ帰るわよ紅太郎。」
零奈はそう言うと、スタスタと歩いて
いった。
紅太郎は驚きのあまり、その場にしばらく
立ち尽くしてしまった…。
まさか自分の妹がこんな力を持っていたなんて思ってもいなかった…
こうして、俺達の戦いは始まった。
しかし、これはまだ序章の一部に
過ぎなかった…。
第4話につづく
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