第26話  城の番人



ドカーン!



───────


………………


「そう簡単にやられるかよ!」


煙の中から紅太郎と零奈が姿を現す。

そして、剣で煙をかき消す。

紅太郎はエメラルド色の剣を縦に構え

呼吸を整えた。


「<ガブリエル>!」


剣を波動させ、ダークポーターを静止させ

ようとするが、ダークポーターは槍を大きく構えた。やはり紅太郎の剣だけでは、波動が

足りなかったのであろうか。


「!!」


  ドカーン!


槍は紅太郎が剣をさしていた場所辺りを

突き刺し、地割れを起こした。

反射神経で何とか回避できたものの、

まともに喰らったら、命はないだろう。

中々、ダークポーターに近づけない。

紅太郎はそう悟った。


「どうしたコウタロウクン?

 これくらい突破してくれなきゃ困るぞ」


バクラは挑発を入れてくる。

紅太郎は隣で同じように戦略を練っている

零奈を見た。紅太郎は零奈を見て、一つの戦い方を思いついた。


「零奈!正面に攻撃を仕掛けてくれ」


「引きつけてる間に俺が斬り込む!」


これを聞いて零奈は大きく開いた手を

口元にあて、驚いた。


「でもそれじゃお兄ちゃんが……」


「でもここであの技は使いたくない…」


紅太郎はダークポーターとその後ろに聳え立って城を鋭く見た。零奈もそんな兄の姿を真剣に見つめ、覚悟を決めた。


「分かった…無理はしないでね」


「あぁ」


二人はダークポーターの前へ行き、零奈は手を、紅太郎は召喚した赤色の<サンダルフォン>の剣とエメラルド色の<ガブリエル>の剣の二本を交差させて構えた。


「<ザドキエル>!

 アルティメットバースト!」


氷の光球を零奈は思いっきり放った。

それとほぼ同時に紅太郎はダークポーターの

右へ回りこんだ。


  ドカーン!


零奈の攻撃は見事に命中し、ダークポーターは怯んだ。体制を立て直すように、槍で重心を整えた。紅太郎はその隙を逃さなかった。


「喰らえ!ダークポーター!

 ダブルバーサ………」


    


    キィン!





「くっ!」


まさか…


こんな…


無茶苦茶だぁぁ…


ダークポーターはあの体制から槍を

紅太郎の走っている方向まで持ってきて、

紅太郎の技を受け止めた。しかも

ダークポーターは傷一つ負わせる事が

出来なかった。


するとバクラの声が聞こえてきた。


「惨めだなぁコウタロウクン。

 ダークポーターの物理防御の高さに

 驚いたか?だがもう遅い!」


「ダークポーター!

 レゾリューム・ランス」


ダークポーターは闇のオーラーを槍先に

ためこんだ。紅太郎は慌てて、その場を立ち去ろうと後退したが、攻撃の回避までは

間に合わなかった。



「やれ!」


「!!」



    ドカーン!


「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!」


紅太郎は吹っ飛ばされ、零奈の居る付近で

地面に叩きつけられた。双剣は、紅太郎から

少し離れた地点へ飛ばされた。

零奈は紅太郎の近くまで駆け寄った。


「大丈夫?お兄ちゃん!」


「まぁギリ…」


紅太郎は何とか持ちこたえたが、今ここで倒れてもいいよっと言われたら、普通に倒れてしまいそうであった。しかも剣は遠くへ。


「ハハッ!ピンチかな?」


バクラは倒れている紅太郎を罵ったが、


「いや、まだだ!」


紅太郎は立ち上がり、戦いの意志を見せた。


「俺もそろそろ新技を披露しようと

 思ってたんだよ」


紅太郎は手の平に力をこめた。

だが、先程の衝撃と力不足で思うようにいかなかった。


「少し足りないかな…」


その様子を見た零奈が紅太郎の側まで寄り、

紅太郎の広げた手に手を携えた。


「お兄ちゃん。私の力も使って!」


零奈が紅太郎の手に触れた瞬間、紅太郎の中に表面的には冷たく、内面的には暖かいものが身体の中に入った気がした。

紅太郎は手に自分の中にある能力を

出現させる事に成功した。


「こういう事だよ!」


紅太郎は手に三つの力を出現させた。


「<ガブリエル>!

 <カマエル>!

 <ザドキエル>!

 三連携!

 三つの素は破壊の光とならん!」


紅太郎から電気、炎、氷が出て

大きな光球が出現した。

直径ニメートル程あった。

あまりの質量で地面の石や砂が

宙へ浮いた。


「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 トリプルオリジウム・レイ!!!」


巨大な光球は光線となり、

目の前にあるすべてのものを破壊した。

ダークポーターも含めて。



   ドカーン!








……………………

…………

……やったか…


跡形も無くなった。

城の入口を除いては。


「行かなきゃ……!?」


気がついたら、紅太郎は吐血していた。

地面が赤く染まり、視界が悪くなってきた。


「お兄ちゃん!!これ!」


零奈は瀕死の紅太郎に青い宝石が入った

ペンダントを渡してきた。


「命の結晶。誠太郎兄さんから

 預かってたの」


紅太郎は零奈から貰った結晶を無言で

握った。すると、みるみる力が能力が

回復しちゃんと話せるようになった。


「ありがとう零奈!助かったよ」


だが、安心出来ていたのも少しの時間

だった。


「あれは…邪霊人形!」


背後からさっきの爆発音に反応した邪霊人形の一部がこちらに押し寄せてきた。


「お兄ちゃん行って!」


「必ず花香ちゃんを取り戻して!」


零奈は決死の思いで紅太郎を送り出し、自分はここで迫りくる邪霊人形の相手をふる事を紅太郎に告げる。


「すまない零奈!頼んだぞ!」


紅太郎は零奈に背を向け、

双剣を回収し、

一人、バクラの城へを突入したのであった。









   

      27話へつづく




















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