第6話  仇

政府軍爆撃隊出撃中の頃、花香は……

ヒューズ少佐の案内で軍の射撃場を見学していた。


「わぁ!沢山の銃があるんですねぇ」


ぱぁーとした顔で花香は周囲を見渡す。

パパパとか流れそう。

ぱぁーと開いたあーこのフラーワー♪


「いつ、何処の国が攻めて来るか分から

 ないからね数々のパターンに対応出来るよ

 うにしているんだ」

ウイルスが蔓延したり、核ミサイルが発射されたりと、ここ最近はそろそろ第3次世界大戦が起こるんじゃないかと言われていた



「だから試作品も多いんだよ」


実際にも試験運用中の物が多く、実戦で使えるものは限られていた。ヒューズ少佐は頭をかきながら


「でも、最近は対ダーク・ウィング用の

 試作銃の開発が集中していて、それは

 極秘だから僕も見たことが

 ないんだよね」


ダークドラゴンによる渋谷襲撃からまだ数日しか立っていないのに、もう新作の武器を世界各国で急がれている。ついこないだまで戦争の足音が大きかったのに、直ぐにこの手のひら返し。共通の敵の存在が技術を最も発展させるのであーる。

花香は「へぇ」て顔をした後、思い出したかのように基地の玄関先で見た光景について質問した。


「そう言えば、ヒューズおじさんは何で

 コータローとあんなに仲がいいの?」


この基地に到着した時、紅太郎と

ヒューズ少佐は肩を取り合って再会を

喜んでいた。男同士が抱き合って、いかにも腐女子が喜びそうなシーンを見せられると普通に疑問に持つだろう。

ヒューズ少佐は何の迷いも無く答えた。


「今の司令…浩一さんから、

 僕がこの軍に入った頃に紅太郎君の

 相手を頼まれたんだよ」

「その年は紅太郎君はお母さん

 を亡くし、父さんは仕事で忙しかったから

 ね」

少し微妙な空気が流れる。何か心の秘境に触れたような感覚がした。そして次の言葉がこの空気を変えた。


「僕はその日から紅太郎君の心の支えに

 なると決めたんだ」


紅太郎とヒューズ少佐の間には深い絆が

築かれていた。それも固く固くまるでエクスカリバーのような。例えが悪いな。


「なるほど…そう言うことだったの」


花香は納得したような顔…というよりかは一昔前の熱血ドラマっぽいセリフを聞かされて困惑した。



「ねぇ!ヒューズおじさん!

 あれ使っていい?」

「おいおい!この感動シーン(自称)で

 それ言うか?」

少佐としては何かしらの感想が欲しかったらしい。あれだな、よくある本命の話は評価や感想は何1つ付かないのに、どうでも良い下らない話はバズる。人生って悲しい。


「まぁいいけど。気を付けてね」


ヒューズ少佐は無邪気な花香を大目に見て許可を出した。

「うん!」

花香は射撃場の的に向かってハンドガンと大型の狙撃銃まで色々な種類の銃を試し打ちをした。いや本当に戦争だった絶対に怖い。彼女は絶対に敵にしたくない。

見事な事にどの銃を使用しても10発中10発が命中し、しかも全て中心に当てるという

凄い記録を出した。


「今の見た?ヒューズおじさん!」


自分でも想定してなかった実力に花香は思わず、その場を飛び跳ねて喜んだ。自覚の無い才能って怖い。


「凄いじゃないか花香ちゃん!」

「ありがとう!ちょっとコータローに

 自慢して来る」


よほど嬉しかったらしい。

まぁ論理的に考えて、ほとんど銃に触れたことがない一般人が気まぐれで撃ってみたら、全弾命中なんて中々ないのも事実だ。だから本当に自覚の無い才能って怖い。


「おう!行ってらっしゃい」


少佐は優しく手を小さく降ると、恐らく基地の休憩所に居ると思われる紅太郎に向かって走る花香を見送った。花香は銃を片手に紅太郎のいる方向に走って行った。











一方、その頃紅太郎は……



「何故兄さんがここに?」

「無論。お前に会うためだ」


何故、自分に会いに来たという理由よりも

誠太郎が何も言わずに急に家を出ていき、湊川家を混乱させてたことが先に頭に浮かんだ。その怒りが紅太郎の頭を支配した。


「何故、あの時急に家を出て行った!」


紅太郎の怒声が基地に響く。


「あの後、大変だったんだぞ!」


無論、この二人はあの日からずっと対立状態である。五年前に母が亡くなる直前に言った言葉。それは兄弟で協力して生き抜けと。その約束を兄である誠太郎はあっさり投げ出して、一人旅に出てしまった。


「それはすまなかったね…」

「しかし、今更そんな過去を

 話した何になる?」

「くっ…!」

確かに5年も前の話だ。

昔の話をごちゃごちゃと掘り返す人ほどロクな人間は居ない。K国とかC国とか。


「俺は自分を鍛える為に家を出た」

「かっこよかったよ。渋谷でのお前」

「久しぶりに東京に来たら、

 天使の力を使うお前を見てな」


まさかの発言に紅太郎はびびる。


「どうしてそれを…?」


目の前でこんな事を言われて動揺しない人なんてほぼ居ないだろ。新手のストーカーっぽい。何かこの展開、前にも見たな。


「さぁどうしてかなぁ。俺も天使の力を

 使えるからかな」


予想外の言葉に紅太郎は驚く。

「何?」

さらに、誠太郎は平然とした顔で


「さぁ決着をつけよう」

「鍛えた俺と、俺への怒りを持つお前

 どっちが上か勝負だ!」


誠太郎は紅太郎の頭に怒りと憎しみがあることをお見通しだった。


「そんな…。何で俺と兄さんが

 戦う必要があるんだよ!」


そう言われても実の兄だ。あまり殺生はしたくないのが紅太郎の本音。


「文句は勝ってから言え!!」

「<メタトロン>!!」


誠太郎はそう叫ぶと、大きな柱のような

武器が複数現れた。

「終焉の陣! 白虎の剣!」

柱が一つになり、日本刀くらいの大きさ

になる。なんだろうこの柱。物凄く……

不思議だ。


「どうした?来ないのか?」


紅太郎が止める前に誠太郎は力を解放してしまった。そして挑発に乗る。


「くそ!」

「<ガブリエル>!!」

紅太郎もエメラルドの剣をとり、構えた。

剣をとった瞬間、技の名前が頭に浮かんだ。


「いくぞ!!」

「<メタトロン>

    壊滅衝撃波!」


 「はあぁぁぁ!!」


誠太郎の技が来ると思い、紅太郎は剣で必死に防御体制をとった。

しかし、その時だった……………

「見て見て!コータロー!わたし…」



紅太郎を見つけた花香が自分の銃の力を

自慢しに来たのである。

「花香!危ない!!」

「へ?」


    グサッ……


誠太郎が放った技が花香の腕に当たり、 

大きな傷が出来た。

その傷口から血を流し、花香は地面に倒れて

しまった……

地は赤く染まっていった………


「はっ…………!?」

「花香ぁぁぁぁぁぁ!!」




        第7話につづく

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