第8話  デュエル決着

    ドカーン!




辺り一面に凄まじい爆風と剣の交わる音が響いた。戦場となった飛行場は大きく破損し、

ほとんど形を見せなくなってしまった。

更には、飛行場の中心に巨大な穴が出来た。

そして、互いの力をぶつけ合った

両者はかなりの体力を消耗し、疲れが見えていた。


「はっ……やったか…?」

紅太郎は周囲を見渡し、誠太郎の姿を

確認した。周りを見る限りだと誠太郎が使用していた柱がない。あれほどの力を行使していたのだから、死ぬ事は無い……多分…

実際に天使の加護を受けてるだろうし。

すると、静けさの中で人影が見えた。


「見事だ!」

「さすが我が弟よ」

「俺の問いに対して100点の回答を

 してくれた」

誠太郎は爆風から出てきたと思ったら、いきなり紅太郎を褒め称えた。いきなりステーキでもこんな事は無いぞ。


「ゑ!?」

紅太郎は驚く。


「改めてお前に守護を任せられる」

急にどうした。こいつの頭はメンテナンスが必要なレベルじゃないの。


「ちょっと待て!どういうことだ?」

紅太郎は混乱していた。大丈夫!紅太郎は正常。誠太郎というアホカエルが異常を天元突破しているだけだ。

すると、


「私が説明しよう」

向こうから父・浩一が歩いてやって来た。


「え!?父さん?」

可愛く無い中年のおっさんが現れた。

ゆけ!社畜ボール!

「こほん。」

「元々この戦いは私が画策したのだ」

「紅太郎。お前の本心とかの伝説を確認

 する為に」

そうか…つまりは試されていたのか。

にしては壮大だなぁ!あぁ!


「順を追って説明しよう」

そうすると、浩一は淡々と話し始めた。


「まず、ダーク・ウィングの出現によって、

 これから激しい戦いになる事は確定

 事項だ」

「誠太郎から聞いた通り、お前の覚悟…

 守るという意味を見させてもらった」

相手を撃つ事が守るに相当するのか(哲学)

まぁ何かを守るには、何かを犠牲にしなきゃいけないって言うし。


「だが、お前は我々の想像以上の答えを

 出してくれた」

「感謝している」

そう言うと浩一と誠太郎は頭を下げて礼を言った。誠太郎があれだけ挑発してくるのも、紅太郎の本気を出させる為であったのか。にしてはやり過ぎ感があるよなぁ!あぁ!

更には、誠太郎の中での母との約束と紅太郎の中での母との約束が一致しているかもあやふやだし。このデュエルの意味を知った紅太郎だが、このフィールドの入り口付近に目をやる。紅太郎は徐々に顔色が曇り始める。


「でもそのために花香は…」

と、口にしたときだった。

入り口付近に倒れていたはずの花香が……

居ない……

それどころか、広がっていた血も綺麗に掃除されている。花香は…と聞こうとしたとき。


「大丈夫だ。ちゃんとあの時

 放った刃は少々弱めにしといた」

「はい?」

こいつの弱めるという精神があった事に驚きの桃の木。

「彼女なら心配要らないよ」

「ちゃんとこちらで保護をしといた」

誠太郎は安心を呼びかけるように柔らかに話した。お前がやったのに。


「もう時期来るよ」


   

  ガラッ…

扉を開く音がした。よし!雪だるま作ろ〜


「コータロー!」

聞き慣れた声がした。

見慣れた胸……じゃなくて姿が現れた。

「花香!お前大丈夫なのか?」

紅太郎は驚いて聞く。

「コータロー忘れたの?私達は簡単には

 死なない」

ん?何か忘れているような…

紅太郎は考え込む。首を傾げて、可愛い仕草を取ろうと思ったが、男には無理だ。


「<ガブリエル>の自動回復能力が

 あるでしょ」

「そう言えばそうだったな…」

戦いに集中しすぎて、紅太郎はこの事をすっかり忘れていた。そうでしたねー。実際に渋谷で紅太郎も受けてましたねー。


「そういえば、私が気絶している

 間に何もしなかったでしょうね」

「はい!?」

「やましい事しなかったでしょうね

 この薄らハゲ童貞野郎が」

紅太郎はハゲてない!

紅太郎はハゲてない!

大事な事なので2回言いました!


紅太郎は童貞です!

紅太郎は童貞です!

紅太郎は童貞です!

更に大事な事なので3回言いました!


「濡れ衣だぁ!」

紅太郎は赤面して否定する。そう否定するほど、怪しくなる。


「誰がどど童貞野郎だー!」

噛む。ますます怪しい。


「あは。引っ掛かったー」

紅太郎が赤面するに対して、花香はその顔を

見て嘲笑った。だから、あざといよ。

最近流行ってるの?あざといヒロイン。


「おーい。そろそろ話を続けていいか…」

「あぁすまん。」

即興に謝り、場を立て直す。

取り乱しを戻して話を再開する。


「1000年前の伝説を知っているか?」

「あぁ担任から聞いた」

「確か…異世界から魔族が来襲して、人類滅

 亡しそうになったが、超能力者に救われた

 話よね」

「あぁそうだ」

浩一はその関連の事を解説し始めた。


「恐らく、1000年前の事が今、

 また起こっているのだろう」

「異世界から来た魔族……これはダーク・ウ

 ィングの事だろうと私は予測する」

うん。爆撃の時にも言っていたね。歳を取るほど物忘れが酷くなり、同じ事を2度3度言ってしまうって本当なんだね。


「そして、渋谷での君達の活躍、我々の

 爆撃の失敗…」

「伝説が本当ならばダーク・ウィングを

 倒せるのは天使の力を得た

 君達超能力者だ!」

予言が正しければの話だけどね。

でも、これだけの証拠が揃うと、あの歴史書は本物の予言だと受け取っていいだろう。


「やはりそういう事になるな」

紅太郎達はお互いの目を合わせうなずいた。


「後、俺はこれから東京を去る」

誠太郎は静かに言った。

紅太郎には何かが見えた。


「………そうか……」

何かを悟ったかのように紅太郎はそっとうなずいた。無論、花香には一切分かっていなかった。


「じゃぁまた何処かで…」

そう言い、誠太郎は去って行った…

その影は残った者達の記憶に強く焼き付いた。誠太郎が見えなくなった頃に、浩一が口を開いた。


「じゃあ我々もお開きにするか」

こうして、紅太郎と兄とのデュエルは終結した。




    

それから1週間…




◇学校

学校は復旧作業が完了し、生徒達は普通に登校をしていた。学校の近所から隣の席の奴まで、先日まで休校だった原因である空間の歪みについてを友達と話し合ったり、SNSで情報を確認し合ったりしていた。紅太郎はと言うと、その事についてはすでに概要を知っていたので、誰とも話さなかった。いや、単に友達が居ないとかそういうのじゃないからね。本当だからね。紅太郎の教室も空間の歪みの話題でもちきりだった。

その中で担任が教室に入ってきて

ホームルームを始めた。

「登校再開して、初日だが皆に

 新しい友達を紹介しよう」



       ガラ……



クラス中に女子だの可愛いだの美人だの

という抽象的な言葉がとんだ。

実際に教室に入ってきた転入生は凄く美人だった。

「河原伊月です。」

「どうぞ宜しくお願いします」

その容姿に見覚えがあった。凛とした瞳。

腰の近くまで伸びるロングヘアー。

母が亡くなった時に1時期、側に居てくれた優しい少女。それが…帰ってきた。

「お前は…」

紅太郎は伊月の姿に目を奪われていた。

   





◇日本の某所のダーク・ウィング本部…

「さぁ氷河期の再臨だ。人類…」

「フフッ…」

不気味な声が口にされた。








        第9話につづく


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