第20話  番外編 デイリーライフ



それは…

一人の少年の日常…

その名は……湊川紅太郎!











◇朝



「おーにーちゃーんー起きて!」


「ぐはぁ…」


紅太郎の朝は可愛い妹に起こされるところから始まる。しかも、元気良く蹴られて。

朝が苦手な紅太郎は妹の零奈に起こすように頼んでいるが、零奈は容赦なく物理的に紅太郎を起こす。なら、零奈に頼まなければ良いだろと多くの人は思うかもしれないが、そうすると今度は紅太郎が起きれなくなり、直に出席日数が足りなくなる。だから仕方なく零奈に頼んでいるのだが、そのせいで毎朝、腹に手を抑えながら登校している。


「零奈!いい加減に優しい起こしてくれよ!」


「いいじゃん!お兄ちゃんなんだから」


「良くねぇよ!」


こんな感じで毎朝、寝起きの兄妹コントを交わして目を覚ます。両手を広げて零奈が部屋を出ていってから紅太郎は制服に着替えて、眠い目を擦りながら2階建ての湊川家の階段を降りる。そして台所に行き、手慣れた手つきで朝食を作る。湊川家は父・浩一と兄・誠太郎は政府軍に勤務してるため帰ることはほぼなく、母はすでに病死している。そのため家事の大半は紅太郎が担う。(零奈も多少は手伝ってくれるが)そんなこんなで朝食を終えると、支度をし、零奈を中学校に送ってから紅太郎は毎日通う高校に向かう。















◇昼


「zzz. . . 」

   

「xが1の時の交点の座標は…

 ちんぷんかんぷん…(。-ω-)」


紅太郎は机に横たわりながらそんな下らない寝言を言い、寝息を立てている。


「コラ!起きろコータロー!」


「(。゚ω゚) ハッ!」


朝から、朝食を作るという重労働をしたせいか、紅太郎はこの時間はよく寝てしまう事が多い。そんな紅太郎をいつもたたき起こすのが花香の日課になりつつあり、呆れている。


「ほら、早く食堂行くわよ!」


「おう…」


紅太郎は大抵は花香と一緒に昼を過ごす。


    ピリリリィ


花香と一緒に食堂を歩いていると紅太郎のポケットから電子音がなった。宛先を見てみると兄・誠太郎からだった。


「今日、軍の道場に来い!」


「え?なん…」


   プープープー


紅太郎が理由を聞く前に電話が切れた。


「どうしたのコータロー?」


「悪い花香。今日は一緒に帰れない」


「うん!わかった」

 

「それよりあれを食べよ!」

花香の要望のご飯をお互いのテーブルまで持ってきて昼飯にした。


「これうめぇな!」

   

「体力がすっごく全回復した!」


「でしょ!」


こんな感じで紅太郎はいつも昼を過ごす。たまにこの間に伊月が来る。











◇放課後

紅太郎は帰宅部である。

帰宅部と言うのはただ家に帰る部活では無い。いかに早く家に帰るかを競う部活だ。

しかし、紅太郎は今日は家には向かわずにある場所へ行く。その場所はHanedaAirport。

政府軍の羽田基地の道場に呼び出されたからである。


    プーー



「空港線直通の急行羽田空港行きが

 発車します。ドアが閉まります。

 ご注意下さい。」


駅員の放送と共に紅太郎は電車に駆け込む。


(良い子は駆け込み乗車はしないでね♡)


電車に乗りながら、紅太郎は一人孤独に呼び出された理由を考える。そして一つの解答に辿り着いた。


「そうだ!また特訓だな!」


電車が駅に到着し、旅客搭乗口とは離れた、別の入り口から政府軍の機関に入る。この場所自体、何度も来ているので紅太郎は道に慣れていた。道場に着くと誠太郎が目の前に居た。道場の前でお辞儀を交わして、お互いに竹刀をもつ。


「せい!」


「はぁ!」


  

  カキーン!


竹刀同士が交わる音が道場内に響き渡る。

二刀流を習得した紅太郎だが、まだまだ未熟だ。またいつダーク・ウィングが襲撃してくるかわからない以上、技を磨き、反応速度を鍛える為に誠太郎が特訓してくれる。

お互いに超能力者なので、この特訓を傍から見たら竹刀の先が見えないくらい早い。










◇夜


夜と言われたら、何を思うだろう。

優雅なディナーや安らかな一時を過ごせる風呂やもしかしたら大人の夜(意味深)を考えるのが平常な解答だろう。

だが、紅太郎の夜は残業サラリーマンのような日々だ。

特訓でクタクタに疲れながらも電車に乗って家に帰投する。ようやく帰ってこれたと思ったら………




「おーにーちゃーんー

 おーかーえーりー!!」


「ぎやぁぁぁぁ!」


疲労度MAXの紅太郎の身体に妹がダイブしてくる。シスコンの人ならこの上ないご褒美かもしれないが特訓で完全に疲労している紅太郎の身体には毒中の毒だ。それから夕食を作り、零奈に食べさせる。

中学生の妹が夜もこんなに元気なのが不思議でしょうがないと紅太郎は常日頃から思っている。深く考えてもしょうがないので紅太郎はいつも夕食、風呂を済ませたら、直に床に入る。こんな感じで湊川紅太郎の一日が終わる。だが、また次の日の朝に妹に蹴って起こされる。前述した通り、一部の変態にはご褒美だが紅太郎には苦痛である。これを聞いて羨ましい悩みだと思う人も少なくないだろう。






紅太郎のこの日常は…

ずっと……ループしている……








     第21話につづく









〜後書き〜

前回の話からかなり間が空いてしまい、申し訳ございません。次の21話から文化祭編です。お楽しみに!






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