第16話  勇者の試練





「ハッ!!」

紅太郎が目覚めた場所はベットの上。

いつもと違う天井を見て、紅太郎は少々怪訝する。ふと横を見る。そして、隣には花香が居た。花香は起き上がった紅太郎をマジマジと見つめ


「大丈夫?紅太郎…」

紅「あぁ…」

なんか同じような光景をついこないだも

見たような気がすると紅太郎は思った

(第11話を参照)

花香の話を聞く限り、どうやら紅太郎は

ルキアとの戦いに敗北し、花香と伊月の

二人がかりで運び、

何とか学校の集団と合流して、

今はホテルの部屋に運ばれたそうだ。

取り敢えず起き上がってみる。


「痛ぁ…」

起き上がろうとしたら痛みを感じた。

地面に落とされた時に背中に傷が

出来てしまった…何とか体制をたて、身体を起こし、紅太郎は部屋を出ようとした


「何処に行くの?」

花香に止められそうになった。

「ちょっとお手洗い」

と、言うと花香はきょとんとした顔で

「一緒に行こうか?」

ゑ?

花香の予想外の質問に

「いいわけねぇだぁろぉぉぉ!!」

と、紅太郎は叫んで部屋を出た。大声を出したので、少し喉が痛くなった。

本当のところはあの後、ルキアが何処に

行き、何をしたのかが気になった。

その為、外に出ることにした。


「くそぉ…身体が重い…」

重い身体を引きずりながらホテルの

ロビーを通り抜け、見つからないように警戒

しながら自動ドアを開け、外に出た。


ホテルから出て短い階段を降りると、階段の

端に人が座っていた。

またしても見覚えがあった。


「よぉ!元気か?」

「これが元気に見えたんですか

 あなたは明日死にますね」

兄・誠太郎が居た。


「で!何故ここに?」

まさかのストーカー?と脳裏に横切った。

何回それを疑うのだろうか。紅太郎は自分の自意識過剰さに痛感していると、誠太郎が叫んだ。


「お前を鍛えに来た!」

胸を張って誠太郎が言う。


「……………はぁ?」

紅太郎は聞き返すと誠太郎は歩きながら、

事の詳細を話し始めた。


「ヒューズ少佐から話は

 聞いているか?」

「あぁ…一応…」

紅太郎は軽く頷く。


「政府軍は最新鋭の観測機を用いて、

 沖縄の上空を観測していた」

最近は便利ですね。

  

「まぁ何となく予想は付いていたが、

 原因はやはり天使…そして風を

 操る天使だった」

結論を述べた後、紅太郎が考えも

しなかった事を誠太郎は言った。



「私は政府軍の偵察員として、沖縄に

 上陸し風の測定をしていたら、偶々

 お前の戦闘を見てね…」

その後の発言は直ぐに予測出来たので、先に言った。


「んで特訓しろと」

紅太郎が断言すると、若干、否定気味に

誠太郎が言う。


「まぁ結論を言えばそうなんだが、

 俺は結構奮闘したと思うぞ

 紅太郎!」

珍しく誠太郎が紅太郎を褒めた。

   

「だが、お前と天使・ルキアの戦闘を

 解析した結果、やはり天使が放つ

 風にかなり圧倒されてると俺は

 思った」

自分でも理解しておいたが、面と向かって言われると、より自覚させられる。


「そこでだ!」

紅太郎は少し嫌な予感がした。

この展開はよく聞いたことがあるからだ。

アニメや漫画でこの後は大変な事を

やらされるという展開がよくあり、

何となく予想が

付いたからだ。


「お前に連撃技の習得をしてもう!」

ほら、やっぱり

紅太郎の予想は的のど真ん中に当たった。

そして、気がついたら紅太郎と 

誠太郎は沖縄の森の中に居た。

紅太郎は話しながら歩いた事に

気づかなかった。

「無自覚って恐ろしいな…」



「<メタトロン>!」

誠太郎は力を解放し、紅太郎に向けた。

あの日以来の事だ。(第6,7話参照)


「風に圧倒されるなら、その風を

 切り裂ける刃が必要だ!」

単細胞な考え方だとは思ったが、それも一理あると紅太郎は思った。

 

「俺の光線攻撃をルキアの風だと

 思い、剣で切り裂いてみろ!」

この時、紅太郎は自分の兄がかなりの

脳筋思考だと感じたが、

それ以上にルキアを助けたい

という気持ちの方が強かったので誠太郎の

特訓に乗ることにした。


「あぁやってやろうじゃないか!!」

「<ガブリエル>!

 ソード!」

紅太郎は力を解放した。



   カキィン!


紅太郎は誠太郎の特訓を必死に受け、

柱から放たれる光線を剣で受け

止めていった。

光線の速度が速くなるに連れ、

紅太郎の剣の

速度も速くなった。



すべてはルキアを助けるため。

同じ目的を持つ者がわかり合えないはずが

無い!種族を超えて救うものがある。

その使命を果たすため特訓。

紅太郎はその勇者になるために

誠太郎の試練に立ち向かう…








   

 

       第17話につづく







     


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