概要
単体でも問題なくお読みいただけますが、前作を読んでいると一層お楽しみいただけます。
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名前を捨て、自分を買った男の家に転がり込んだあたし。
キスはしない。セックスだけをする。
あたしたちはウィン・アンド・ウィンの関係で、そして互いに最低だ。
——そのはず、だったのに。
※『玉鬘菖蒲』さまのアンソロジー『温度』に寄稿した作品です。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!タイトルに隠された意味
「生きてんの?死んでんの?」
鏡に映るおのれに問いかける元高校生。主人公は同じ筆者による『不幸自慢』のヒロインです。このお話は『不幸自慢』のそれから。ですので、まず前作をお読みになることを強くお勧めします。
東京、十条駅。セブンスターの煙。コンビニの弁当。
設定や小道具になんとも言えない生活感、リアル感があります。自分の心を虚無で満たし続けようとする主人公の頑なさがいじらしく、やはり痛々しい。でもひとりで生きているつもりになっているのは、自分だけなのかも知れません。
最終話で開かれる新しい世界が、それを思わせてくれました。
スミス殺し、とはいったい誰のことでしょう。
それもラストで明らか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ミューのルルヴェ……カイのシガー
作者様のつけたキャッチコピーに、『きっと誰よりも匿名希望だった』とあります。
これを念頭読み進めるといいかと思います。
『美雨さん』は、成程な『ミュー』という呼び名です。
不意に、厳しい前作『不幸自慢』よりも救いを感じました。
髪にまつわる話が、とても優しい男じゃないかとさえ思いました。
煙草の扱い方、上手だと思います。
そして、鏡が散らばっています。。
どこの『ミュー』にも自問自答したいのかな。
もう少しでいい、あたたかさを上げたい二人です。
それから、『ノー・ネーム』という第1話のタイトルだけで、満腹になります。
ああ、鏡の前での問答が分かる気がします。
それは、作…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生身から離れて生きていた少女が現実へ戻っていくストーリー
「あたし」は、家族から、それまでの日常から離れて生きるための逃避場所だった
生きるために現在から切り離される必要があった。
別の自分として生きるために名前も偽る必要があった。
別の自分だから、身体を売ることにも抵抗はない。
少なくとも抵抗を自覚しない。
彼女が「美雨」という名を名乗ったのも、雨で先が見えない逃避場所を暗示しているように感じた。
彼女を逃避場所から現実に連れ戻したのは、母の死。
逃げて来た場所を失って、今の自分と向き合う結果となった。
本来の自分と、逃避場所としての自分。
その二つに折り合いをつけられなくて彼女は自暴自棄になる。
しかし、同居人でしかなかった男の口…続きを読む - ★★★ Excellent!!!たとえ私を守ってくれるのが、虚構の真実だったとしても。
同作者様の前作『不幸自慢』を読んでからの読書を、強くお勧めする。もちろん、この作品だけでも楽しめるが、前作があると深さが違う。
主人公は晴れの日が嫌いな美雨。同居中の買春相手からは、ミューと呼ばれていた。もちろん、偽名だった。そんな主人公を買い、自宅に住まわせる男性・カイとの関係を軸に、物語は進んでいく。
カイは美容師のアシスタント。そして主人公は未成年。そんな二人の家に、ある日、刑事が訪ねてくる。主人公はカイの嘘によって救われた。しかし、もうそこにいることは出来なかった。主人公は雨の中を、行く当てもなく走り出す。
生きているのか、死んでいるのか。
匿名希望の私と、偽名。
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