たとえ私を守ってくれるのが、虚構の真実だったとしても。

 同作者様の前作『不幸自慢』を読んでからの読書を、強くお勧めする。もちろん、この作品だけでも楽しめるが、前作があると深さが違う。
 主人公は晴れの日が嫌いな美雨。同居中の買春相手からは、ミューと呼ばれていた。もちろん、偽名だった。そんな主人公を買い、自宅に住まわせる男性・カイとの関係を軸に、物語は進んでいく。
 カイは美容師のアシスタント。そして主人公は未成年。そんな二人の家に、ある日、刑事が訪ねてくる。主人公はカイの嘘によって救われた。しかし、もうそこにいることは出来なかった。主人公は雨の中を、行く当てもなく走り出す。
 
 生きているのか、死んでいるのか。
 匿名希望の私と、偽名。

 救われない話のようで、最後にはハッピーエンドが待っている。
 ラストの種明かしに、唸ること間違いなしの作品だ。

 是非、御一読下さい。
 

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