ミューのルルヴェ……カイのシガー

作者様のつけたキャッチコピーに、『きっと誰よりも匿名希望だった』とあります。

これを念頭読み進めるといいかと思います。

『美雨さん』は、成程な『ミュー』という呼び名です。

不意に、厳しい前作『不幸自慢』よりも救いを感じました。

髪にまつわる話が、とても優しい男じゃないかとさえ思いました。

煙草の扱い方、上手だと思います。

そして、鏡が散らばっています。。

どこの『ミュー』にも自問自答したいのかな。

もう少しでいい、あたたかさを上げたい二人です。

それから、『ノー・ネーム』という第1話のタイトルだけで、満腹になります。

ああ、鏡の前での問答が分かる気がします。

それは、作中で共に痛みを感じてください。

独り生きるはずなのを独りで生きているにしたい気持ちとこのままでいい気持ちが平行しているのかなと思いました。

殺伐としていながら、幸せへの階を踏み始めた感じがいたします。

同棲を描いたものかと思い出しましたが、もっと、どろっとしているのは、十分に伝わりました。

個人的に思うのですが、日本語も含め海外の言葉で、多くの自己紹介では、『私は、田中です』というのか、『私を田中と呼んでください』というのかに分かれると、思います。

前者は、アイデンティティが私イコール田中であるのが確立されている感が強く、後者は、親しみのある間柄で、そうでありたいのか、ニックネームに関して自分の意見も交えることができるのだと思います。

『ミュー』に、理華にと、今は、本当の自分へと逆行させられた大事件でした。

自分をどう呼びたいかを決めるのは、自分だよと、それが自立だよと、私なら伝えたいです。

『カイ』は、なんてお名前かしらね?

お誕生日を祝う歌で、『昨日迄の君は死にました』と言う歌詞を抱えるものがあります。

ふと、それを思い出しまし、そうだ、死んだんだと思いました。

二人は、本当の二人へと命がけで、脱皮したのかと感じさせる秀作です。

青春は、こんな苦いシガーを二人で潰し合い、鏡にうつる自身の羽ばたきを待つことが、ときにあるのでしょうね。

毒を盛られるつもりで哀しみを抱いてください。

(ルルヴェは、バレエのつま先立ちです。)

是非、ご一読ください。

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