第14話《彼女とレッサーパンダ》

「……懐かしいな。本当に久しぶりだ……前に来たの三年前だけど」


「それはそこまで懐かしくないんじゃないですか……?私は懐かしいですけど……」


外見は、前に来たときから全然変わっていない。

まぁ、三年前工事も何もしていなかったのに、外見が変わっていることはないと思うけども。


「じゃあ、入ろうか」


「はい」


入場料金の七百円を支払い、公園内に入る。

休日なだけあって、家族連れやカップルが結構いるな。

……俺達も傍から見たらカップルに見えるのだろうか……


「どこから回ります?」


「……え?あっ、そ、そうだな……俺はどこでも大丈夫だけど……」


「じゃあまずレッサーパンダを見に行きましょう!確か小動物ゾーンでしたよね!」


「お、おう……分かった……」


「柳さん!早く早く!」


やっぱり好きなものに対する情熱というのはすごいものだな……

俺にそんな熱中できるものなんてあるか?

……ないな……俺にそんな熱中できるものなんて。


「見てください!柳さん!レッサーパンダですよ!」


「お、おう。久しぶりに見たけど、やっぱ可愛いな」


「そうですね!本当に可愛いです!ずっと見ていられそうです!」


「じゃあ、しばらく見ていくか?」


「いいんですか!?じゃあ、お言葉に甘えて……」


渡部さんは、ジーッとレサーパンダを見て幸せそうな顔をしている。

……可愛いな……本当に……


「……ん?どうしたんですか?柳さん?私の顔に何かついてますか?」


「えっ?な、なんで?」


「だって私の顔を見ていたような気がしたので……気のせいですかね?」


「あ、ああ。気のせいだと思うぞ……」


「そうですか」


言えない……

渡部さんを含めた近くにいる人皆がレッサーパンダを見ている時に、自分だけ渡部さんの幸せそうな顔に見とれていたなんて……


「じゃあ、そろそろ次に行きますか?」


「あっ、ああ……そうだな……次はどこに行く?」


「そうですね……ここから近い順に回りますか?」


「俺はそれで大丈夫だけど……」


「じゃあ、行きましょうか!」


「そうだな」

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