第5話《新クラスでの再会》
十分ほど歩くと学校に着いた。
校門をくぐってすぐのところに、クラス分け表が貼り出されている。
人が群がっていてすぐに見ることは叶わなかったが、並んでいたら割と早く見ることができた。
クラスは一年生全体で八クラスあり、一クラス四十人だ。
「えーっと、柳悠一……柳悠一……あ!あった!シン!俺は三組だぞ!」
「お!俺も三組だ!これで十年間クラス一緒だな!」
「嘘だろ!?ありえないだろ!?」
「嘘じゃないんだな、これが!っていうか思い返してみれば、あの電車で話してたことフラグじゃね?」
確かに、電車で話していたことはフラグだったのかもしれない。
しかし同じクラスになってしまったものは仕方ない。
やはり、恐怖は感じるが。
「はぁ……。じゃあ、一緒に教室まで行くか……」
「おう!」
そう言って、俺達は三組の教室へ向かった。
四組の教室にはもう結構な数の生徒がいて、自分の席に座っていた。
俺とシンもそれぞれ、出席番号順に指定されている席についた。
俺が窓側の列の一つ隣の列の一番後ろで、シンがその右隣だった。
「同じクラスの上に隣の席かよ……」
「これは酷いな……」
まさか、席までとは。
ここまで一緒だと、もはや恐怖を通り越して呆けてしまう。
「はぁ……隣か……まぁ、席替えまでの心房だな」
「そんなに嫌か?俺と隣の席が」
「いや、嫌じゃないが……ずっと隣なのは流石に嫌だな」
「それは俺も嫌だな」
そんなことを話している間にも、どんどん三組の生徒が入ってくる。
もうすぐ集合時間になるのでそろそろ全員が揃う頃だろう。
そしてまた、一人の生徒が入ってきた。
「え……?あの子は……昨日の……」
入ってきた生徒、それは俺が昨日初恋をしたまさにその人だった。
彼女は座席表を見て自分の席を確認すると、こっちに向かってきた。
そして彼女は、俺の隣の席に座った。
「おはよう。これから一年間同じクラスだね。よろしく」
「う、うん……。こ、こちらこそよろしくお願いしみゃす……」
しまった……。
好きな人の前で噛んでしまった。
第一印象最悪だろう。
「ぷっ。噛んでるじゃん。君面白いね!」
「ご、ごめん……新しいクラスだから緊張しちゃって……」
彼女は笑ってくれた。
これなら印象は悪くはないんじゃないだろうか。
「あははっ!そっか。改めてよろしくね」
「お、おう……。こちらこそ」
改めて彼女の姿を見てみると、まるで男子生徒のような服装をしていた。
上は男女共通のブレザーを着ているが、下は濃紺の制ズボンだ。
加えてネクタイも締めているから、男子の服装と全っく同じだ。
確かにこの学校では女子もオプションでズボンスタイルにすることができる。
だが、電車の中で一人二人ぐらい見かけた気もするがそんな生徒はほぼいない。
しかし、彼女にはその服装が異様に似合っていた。
俺の中では、彼女は何を着ても似合いそうだが。
「おいユウ。その隣の子と知り合いなのか?」
シンが小さな声でそう聞いてきた。
「え!?い、いや……違うけど……。なんでそう思ったんだ……?」
「いや、なんとなくだが……。そうか……違うんなら悪かったな」
俺はとっさに、彼女が初恋の相手であることを隠した。
もしかしたら彼女に聞こえていているかもしれないし、それに人がいる教室でする話でもないからだ。
「二人って知り合い?ほら、ひそひそ話してるってことはそうかなって思って」
シンと小さな声で話し終わると、彼女から質問が来た。
まぁ、誰でもそう思うだろう。
「まぁね。小学校から今まで、ずっと同じ学校なんだ。ついでにクラスも」
「そうなんだよなぁ。今まで一度も離れたことがないんだ」
「へー!なんかすごい!」
「そうかなぁ〜?」
彼女に言われたらそんな気がしてきた。
少し恐怖を感じていたさっきまでの自分が嘘のように、今では誇らしさを感じるレベルだ。
そんなことを話していると、教室のドアが開いて、先生と思われる人が入ってきた。
時計を見てみると、もう集合時間になっていた。
名前を聞かなければいけなかったと気づいたのは、先生が教壇に立って話し始めたときだった。
今更聞くことはできないので、自己紹介の時間まで待つことに決めた。
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