第34話《見学先の相談》


「じゃあ、行こっか。どのクラブからまわる?」


今日も今日とて授業が終わり、放課後になった。

今、俺は秀樹と一緒に、すべての部活が乗っているパンフレットを見ている。

一枚のパンフレットを二人で見ているので、当然のように顔が近い。

しかも、俺の方を向いて質問してきているから、秀樹の可愛い顔が目の前に映った。

瞬間、俺の心臓が少し高鳴る。

お、落ち着け俺……!秀樹は男秀樹は男秀樹は男……!

そう念じながら、俺は冷静を装って秀樹の質問に答える。


「そ、そうだな……。まずは運動部か文化部かだけど……どうする?」


「そうだなぁ……。僕は帰るのが遅くなるのは嫌だから、文化部にしたいんだけど……悠一くんはどう?」


「まぁ、俺も文化部の方がいいな。理由は同じ」


「じゃあ、文化部で気になる部活とかある?」


秀樹にそう言われ、パンフレットの文化部のところを見る。

文芸部、軽音部、吹奏楽部……メジャーな部活が並んでるな……ん?


「天文部……」


「え?天文部が気になるの?」


「あ、ああ……まぁ、な」


「へー!星が好きとか、そんな感じ?」


「いや、死んだ母さんが好きだったなぁ……と……」


「えっ……あっ……ご、ごめん……」


「あ、いや、気にするな。そこまで引きずってるわけじゃないから」


星が好きだった母さんの顔を、頭の中から振り払う。

母さんという言葉を出すんじゃなかったと、今更ながらに後悔した。

秀樹には悪い事したな……。嫌な気分にさせてしまっただろうか?


「じゃ、じゃあ天文部からいこっか!」


「お、おう。そうだな。秀樹は気になるところはあるのか?」


「うーん……。強いて言うなら文芸部かなぁ……。香織が文芸部らしいからさ」


へー……渡部さんは文芸部なのか……。

意外……ではないな。うん。

あれだけライトノベルが好きなら、自分で書いたりしているのかもしれない。

……そういや買ったライトノベル、読み終わったけど案外面白かった。

恋を知らなかった俺でもなかなか楽しめたし。

次の巻も買ってみようかな……。

ちょっとライトノベルについて調べてみたけど、異世界モノとか読んでみたい気もする。

うーん……また渡部さんに聞いてみるか。


「じゃあ、天文部の後は文芸部行くか。部室も近いみたいだし」


「うん!じゃあまずは天文部にレッツゴー!」


俺は秀樹と一緒に教室から出て、天文部に向かって歩き出した。

……あ、ちなみに『レッツゴー!』と言ったときの秀樹はめっちゃ可愛かったです。はい。

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