第35話《天文部への訪問》


「ここが天文部の部室みたいだね」


「ああ。扉に『天文部』ってもろに書いてあるしな」


……しかし、別棟の部室はここまで遠いものだったのか……。

思っていたよりも距離があって驚いた。

……公立高校なのに、結構敷地あるからなこの学校……。

私立高校並では無いけども。


「じゃあ、入るよ」


「……おう」


秀樹がコンコンと扉をノックする。

すると、『はーい』という声が中から聞こえてきた。

その声を聞いた秀樹は、ゆっくりと扉を開けていく。

……天文部には、どんなところで、どのような先輩たちがいるのだろうか。

そんなワクワクを心に募らせながら、俺と秀樹は天文部の部室に入った。


「「し、失礼します」」


扉を開けた先にいたのは、三人の女子生徒と、二人の男子生徒だった。

その内の一人で髪の長い女子生徒が、部室に入ってきた俺たちに声をかけてきた。


「おー!見ない顔だね!入部希望者かな?」


「い、いえ……。まだどの部活に入ろうか決めかねてまして……。見学に来ました」


「ぼ、僕も同じです」


「そっかそっか。どうぞ、見学していって!」


「ちょっと。この子たち、ここ来るの初めてでしょ?なら、説明しなきゃ見学の意味ないでしょ」


「……確かに」


「いや、当たり前だろ……」


「はいそこー!部長にそんな態度とっていいんですかー!?」


「部長つっても名ばかりだろ。殆ど副部長に押し付けてるじゃねえか。なあ?」


「……それは否定できないね」


「ほら。副部長もこう言ってるぞー?」


「うっせえわ!それでも部長は私なんだよ!文句あんのか!?」


「「「別にない」」」


部長の人への返答が三人ハモっていたことで、部室に笑い声が響いた。

……いやなにこの雰囲気……。

ここ、本当に天文部ですか?俺が思ってた天文部の雰囲気じゃないんだが……。

もっと、静かな雰囲気の部活だと思ってた……。

……大丈夫か?この天文部……。

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女の子を好きになったことがない俺が初めて恋をした 辻谷戒斗 @t_kaito

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