第30話《渡部……いや、秀樹が帰る》
「いやー、面白かったね!いろんな悠一くんを見れて良かった!」
「……俺はめっちゃ恥ずかしかったけどな……」
あれから渡部……いや、秀樹は卒業アルバムにのっているすべての俺を探し当て、その時々にあったことを説明させられた。
正直、ここまで恥ずかしいものだとは思っていなかった。
まぁ、俺も中学生の頃を振り返って思い出し笑いできたし、よしとするか。
……それでも恥ずかしかったことには変わりないけども……
……っていうか、もうこんな時間か……
かれこれ一時間ぐらい喋ってたことになるな……
わた……秀樹は帰らなくて大丈夫なのだろうか。
もうそろそろ夕方になる頃だが……
「わ……秀樹。帰る時間大丈夫か?その……門限とか」
「え?わわっ!ヤッバイ!帰らないと!」
「や、やっぱり門限か?」
「ううん。門限は特にないんだけど……買い物してから帰らないといけないんだ。料理は香織に任せっきりだから、これぐらいはしようと思って。中学生の時から買い物は僕がしてるんだよ」
「そうなのか……」
「うん。今日は食材を買わなくてよかったから、そんなに買い物に行くのが早くなくて助かったんだけど……シャンプーとボディーソープが切らしちゃってて、買って帰らないといけないんだ。それに僕の家、ちょっと離れてるし……あんまり遅くなるのも、香織に悪いしね」
「……なるほどな。分かった。じゃあ、急いで出ないとな。準備できたか?」
「……忘れ物なし……オッケー!できたよ!」
「よし。行こう」
二人で部屋から出て、玄関に急ぐ。
一階に降りると、文加が晩飯の準備をしているところだった。
「文加!秀樹もう帰るってさ!」
「え!?わ、分かった!今行くよ!」
文加が料理を中断して玄関に向かってくる。
渡部はもうすでに靴を履き終わり、すぐにでも出られる状態だ。
「帰り道分かるか?あれだったら送っていくが……」
「大丈夫!行きで覚えたから!お邪魔しました!悠一くん!文加ちゃん!」
「い、いえいえ!これからも兄と仲良くしてやってください!」
「もちろんだよ!じゃあね!悠一くん!また明日!」
「お、おう!また明日!」
「うん!バイバーイ!」
そう言って秀樹は俺の家から去っていった。
……さて、秀樹も帰ったことだし、晩飯まで勉強するとしますか〜。
「待った待ったお兄ちゃん!」
「……なんだよ……俺今から勉強しようと――」
「晩御飯の時……説明……よろしくね……?」
「……はい」
俺が自分の部屋に向かう足取りは、とてつもなく重かった……
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