第31話《妹への説明》


「……さて……お兄ちゃん……説明、よろしく」


「……はい……分かりました……」


晩飯を食べ終わった後、食卓で文加から俺への事情聴取が始まった。

クソッ……食べ始めた時は何も言ってこなかったから、忘れてると思ってたのに……


「なんで敬語?……まぁいいや。ほら、さっさと話して。渡部さんとの関係」


「あ、ああ……」


な、なんか文加……怒ってる?

なんで文加が怒ってるんだ?

というか……怖い……

十数年一緒に過ごしてきたけど、こんな文加は初めて見たかもしれない……

早く答えないと、俺の命が危ういかも……


「ええっと……秀樹はな……なんて言えばいいんだろうな……」


「……早くしてよ……!」


「は、はいっ!俺の初恋の人かもしれない人です!」


いや怖ー!!

怖すぎだろ!!一瞬般若に見えたぞ!!

思わず馬鹿正直に答えちまったじゃねえか!!


「……初恋の人……かも……?どういうこと?」


「ほ、ほら……前に言っただろ。初恋したって」


「うん。盛大にお祝いしたね。その人が渡部さんかもしれないってこと?」


「あ、ああ……」


「なんで、かも、なの?」


「確証がないんだ。初恋の人は秀樹にそっくりなんだけど、秀樹には双子の妹がいるんだ。そいつもそっくりなんだよ」


「つまり、お兄ちゃんはどちらかに初恋したって解釈でいい?」


「お、おう……」


「それで?お兄ちゃんはどっちが好きなの?」


「は、はあ!?だから分かんねえんだって!どっちを好きになったのか!」


「違う。私が聞きたいのは今はどっち……ううん、誰が好きなのか」


……は?

俺が……今、好きな人……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る