第32話《説明後の朝》
「……おはよう。文加」
「うん。おはよう。ご飯できてるよ。学校もあるし、早く食べてね」
「ああ……。分かってる……。ふぁ〜……いただきます……」
日曜日が明けて、月曜日の朝。
結局俺は、昨日の文加の質問に何も答えることができなかった。
あの質問の後、俺が数十分間答えられずに黙っていると、文加がはぁ……と溜息を吐いて立ち上がり
『お兄ちゃんはさ、初恋をして、自分が恋ってものを知ってるって思ってるのかもしれないけど、全然分かってないよ。もっと知ってきて。そしたらまた話を聞くよ』
と言って、自分の部屋に戻っていった。
その後から今に至るまでずっと文加から言われたことについて考えてみたが、何も分からずじまいだ。
そのせいで、あまり寝付けなくて今は寝不足だ……。
……文加は結局、何を言いたかったんだ……?俺が、今好きな人……?俺が、恋というものをまだ完璧には知らない……?
……駄目だ……。全く分からん……。
「お兄ちゃん!何ぼーっとしてるの!早くご飯食べて!遅れちゃうよ!」
「あ、ああ。悪い」
取り敢えず、考えるのは後だ。
今は文加の言う通り、早く食べてシンとの集合時間に間に合うようにしないと。
……うん。今日の朝飯も美味い。やっぱピザパン最高。
「……ごちそうさま。今日も美味かった。特にピザパンなのは俺的に嬉しいぞ」
「良かった〜。お兄ちゃんピザパンも好きだもんね」
「おう」
っていうかピザパン嫌いな人とかあんまりいないと思うんだが……。
あれ?もしかしてそう思ってるの俺だけ?そんなことないよね?
……まぁ、それは置いといて……さっさと家を出ないとな。時間も時間だし。
「文加。後片付け任せるな」
「うん。任せて〜」
「……悪いな。いつも任せっぱなしで」
「お兄ちゃんの方が先に出ないといけないんだから、当たり前じゃん。これぐらい大丈夫だよ」
「……ありがとな。じゃ、行ってくるわ」
「うん。行ってらっしゃい。……頑張ってね。お兄ちゃん」
「おう。……うん?頑張れって何を?」
「なんでもなーい。ほらほら、行かないとシンさんとの集合時間に間に合わないよ!」
「お、おう……」
文加に文字通り背中を押され、東千葉駅に向けて歩き出す。
文加は俺に何を頑張ってほしいんだ?勉強とかか?
……まぁいいか。取り敢えずシンと合流しないとな。
……そういえば時間を確認してなかった。
ポケットからスマホを取り出し、時間を確認する。
……え!?もうこんな時間かよ!?ヤバイ!
時間に余裕がないことを知った俺は、スマホをポケットに直した後、東千葉駅に向かって走り出した。
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