第29話《彼らの共通点》

「おーっす。取ってきたぞー」


「おかえり!ちょっと遅かったね!」


「ま、まぁな。ちょっと探すのに時間がかかってさ」


「へー!そうなんだ!よし!見よう見よう!」


「お、おう……そうだな……」


部屋に帰ると渡部が笑顔でむかえてくれた。

この笑顔のためならば、毎日仕事を頑張れる気がする。

というか絶対に頑張れる。

……それにしても、卒業アルバムを見られるのってなんか恥ずかしいな……


「へー……楽しそうだね……あ!柳くん発見!」


「お、ホントだ」


「あれ?隣にいるのって……もしかして花田くん?」


「ああ。そうだ。言っただろ?ずっと同じクラスだったって」


「ホントにすごいね……なんでなんだろう……」


「マジでそれな!ずっと疑問なんだよ。なんでことごとくシンと同じクラスなのかが!いや、嬉しいけどね!?嬉しいけどもだ!」


「うーん……それは誰にも分からないね……運命としか言えないかなぁ……」


「だよなぁ……」


「し、失礼しまーす……」


俺達がシンの話で盛り上がっていると、文加が入ってきた。

お菓子を持ってきてくれたのだろう。

クッキーのいい匂いがする。


「ありがとな。文加」


「わー!ありがとう!」


「いえいえ。どうぞごゆっくり」


そう言って文加は部屋から出ていった。

本当によくできた妹だ。

今度なにか買ってきてやろう。


「良い妹さんだね」


「ああ。本当にな。俺は世話になりっぱなしだよ」


「僕もなんだよね〜……両親は共働きで帰ってくるのも遅いから、料理はいつも香織が作ってるんだ」


「ふーん……渡部さんって料理できるんだな。渡部は作れるのか?」


「僕は普通かなぁ……っていうかずっと思ってたんだけど、二人とも渡部だと分かりづらいから名前で呼んでよ!」


「え!?な、名前で!?」


「うん!僕も柳くんのこと悠一くんって言うからさ!僕のことも秀樹って呼んで!」


「い、いや……そんな急には……」


「ダメかな……」


「うっ!!」


やめて!上目遣いで俺を見つめないで!

そんなのされたら断れないから!

可愛すぎて断れないから!


「……ひ、秀樹……これでいいか?」


「うん!悠一くん!」


……渡部に悠一って呼ばれるの、いいな……

なんか、今、めちゃくちゃ幸せな気分……

……っていうか俺はなに男の名前を呼ぶのに、そんな緊張してんだよ……

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