第28話《卒業アルバム》

階段を上がり、自分の部屋に向かう。

こんな可愛い子を自分の部屋に入れるのは初めてだ。

……男だけど。


「ここが俺の部屋だよ。まぁ何もないけど、取り敢えず適当に座ってくれ」


「うん!じゃあ、失礼します!」


「それで、何するんだ?正直遊べるものと言えばゲームぐらいしかないんだが……」


「えーっと……そうだね……うーん……あ!柳くんの卒業アルバム見たいな!中学校の!」


「……え?そんなんでいいのか?言っとくけど何も面白くないと思うぞ?」


「ううん!見たいの!ねぇ、ダメ……?」


「いいや!全然大丈夫だぞ!いくらでも見てくれていいからな!」


「ほんと!?ありがとう!柳くん!」


「じゃあ、ちょっと取ってくるわ。渡部はここにいてくれ」


「うん!分かった!」


……あの上目遣いは反則だろ……

いや、無意識なんだろうけど……

そんなことされたら断れないじゃないか……

っていうか卒業アルバムってどこに置いたっけ……?

確か一階のどこかに置いたと思うんだよなぁ……

だから今一階に向かってるわけだけど、どうも記憶が曖昧で……

……よし、文加に聞くか。

こういう時は文加に聞くのが一番だ。


「おーい!文加ー!」


「ん?何?お兄ちゃん?」


「ちょっとな……って、おおう……お菓子作ってくれてんのか。サンキューな」


「ううん。お客さんが来たし、それぐらいしないとなぁって。それで?どうしたの?」


「ああ。そうだった。俺の卒業アルバムが、どこにあるか知ってるか?」


「お兄ちゃんの卒業アルバム?それなら確か……お母さんに見せるために仏壇に置いた後、その部屋のお母さんの本棚に入れたはずだよ」


「おお!そうだった!思い出した!ありがとな文加!」


「う、うん……」


……えーっと、確かこの辺に……おお。あったあった。

……まだ卒業して間もないのに、懐かしく感じる。

それは多分、基本週五で会っていた中学校の友達たちと急に会わなくなってしまったからなのだろう。

……まぁ、シンは別なんだけど……

そんな若干懐かしさをいだきながら渡部が待つ部屋へと戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る