第27話《人を連れての帰宅》

はい。家に帰ってきました。

……ただし、可愛い人を連れて。

誰も家にいないことを祈り、インターホンを鳴らす。


『はーい。開いてるよ―』


「……開いてるらしいから、入ろうか」


「うん!」


ドアを開けて渡部とともに家に入る。

ドタドタとこちらに向かってくる足音が聞こえる。

ああ……説明めんどくさそう……


「おかえりー。お兄ちゃ……ん……え?あれ?」


文加は何度も目を擦って俺と渡部、特に渡部を見ている。

それをやめたと思えば、今度は自分の頬を引っ張り始めた。

流石にイラッとしたので文加に一言かけることにした。


「おい文加。夢じゃないぞ。現実を見ろ」


「…………」


「……?おい、どうした?」


「……お兄ちゃんが……お兄ちゃんが女の人連れて帰ってきたああああああああ!!!!」


……うん予想はしてたけどさ……そんなに驚かなくてもいいだろ!!

……驚きますか、そうですか。


「お兄ちゃん!!この人誰!?すっごく可愛いじゃん!!」


「落ち着け文加。俺もそうは思うが、渡部は男だ」


「……またまた〜。冗談よしてよお兄ちゃん。こんな可愛い人が男なわけ無いじゃん」


「いや、事実だ。なぁ、渡部」


「うん……僕は男だよ……」


「……え?本当に?」


「本当に」


「……マジ?」


「大マジ」


「……失礼しました。渡部さん」


「あはは。気にしないで。慣れてるし」


「じゃあ俺らは俺の部屋に行くから。渡部もそれでいいよな?」


「うん。もちろんだよ」


「はーい……ごゆっくり〜……」


……文加への説明は渡部が帰った後にしよう……

今説明することはできないし、何より混乱している文加に何を言っても無駄だ。

今は渡部との時間を楽しもう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る