第11話《彼女の素顔》
「千葉駅の構内に本屋があるから、そこでいいか?」
「は、はい。大丈夫です」
ついにデートが始まってしまった。
なんだろう、とても緊張する。
何を話せばいいのか分からない。
気まずい沈黙の時間が流れる。
まずい、何か話さないと!
「えっと、本好きなの?」
「は、はい!大好きです!」
「そ、そうなんだ……好きなジャンルとかあるの?」
「そうですね……やっぱり、ラブコメですかね!私がよく読むのはライトノベルなんですけど、その中でもラブコメが好きです!柳さんは本を読まれたりするんですか?」
「い、いや……あんまり読まないかな……」
「そうなんですか……よし!今日、私のオススメの本を柳さんに買ってあげます!」
「え!?いや、そんなの悪いよ」
「あなたに本の、ラノベの良さを知ってもらいたいんです!」
「うーん……じ、じゃあ自分で買うよ……」
「そうですか、分かりました!本屋にも着いたことですし、私が買いたい本を選んだら柳さんに合いそうな本を探しますから、待っていてください」
「あ、ああ……」
まさか、渡部さんがラノベが好きだったとは。
チラッと本を選んでいる渡部さんを見る。
その顔は、とても楽しそうで、可愛い笑顔だった。
そんなに楽しそうな顔されると、なんかこっちも楽しくなってくるな。
「決まりましたよ!これがいいと思います!」
「お!ありがとう、じゃあ、買いに行くか」
「はい!内容は帰ってから見てください!」
「ああ。分かった」
二人でレジに向かい、別々に会計を済ませて本屋を出た。
本屋を出た瞬間、渡部さんがガタガタと震え始めた。
どうしたんだ!?さっきまでとても楽しそうにしていたのに。
「えっと……わ、渡部さん、大丈夫?」
「あ……そ、その……ご、ごめんなさい!私、ラノベのことになると我を忘れてしまって……」
「い、いや、確かにちょっと驚いたけど……大丈夫だよ。むしろそんな風に夢中になることができるものがあるなんて、素晴らしいことだと思う」
「えっ……そ、そうですか……その……ありがとうございます……」
「よし!じゃあ、お昼どうする?」
「え、えっと……どこでも大丈夫ですけど……な、なら、柳さんのオススメのお店に案内してください。私もオススメの本紹介したので……」
「分かった……でもなぁ、あそこは流石に……」
「本当にどこでも大丈夫ですよ」
「……博多の豚骨ラーメン店なんだけど、そこでいいか?」
「はい。全然大丈夫ですよ」
「よし。じゃあ行こうか。こっちだよ」
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